駐車場問題11 駐車場における転倒事故につき管理組合の安全配慮義務違反が認められた上で原告の過失割合が75%とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場における転倒事故につき管理組合の安全配慮義務違反が認められた上で原告の過失割合が75%とされた事案(仙台地判令和4年1月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告管理組合の設置・管理に係る駐車場において生じた原告の転倒事故につき、原告が、被告管理組合に対し、債務不履行又は不法行為若しくは民法717条1項(工作物責任)による損害賠償請求権に基づき、治療費等19万1376円、休業損害15万円、慰謝料200万円、弁護士費用23万4000円の小計257万5376円の支払を求めるとともに、被告保険会社に対し、直接請求を認める保険約款又は被告管理組合の被告保険会社に対する被告管理組合・被告保険会社間の保険契約による保険金請求権の代位行使に基づき、被告管理組合に対する判決が確定したときに、被告管理組合と同じ支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告管理組合は、原告に対し、52万8646円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 被告管理組合が負っていた安全配慮義務の具体的内容は、駐車場使用者に対し、通常の靴に装着可能な滑り止めや融雪剤等を定期的に周知した上で提供する、抽象的に注意を周知するのではなく転倒事故が起こりやすい時間帯・気温、ゴム長靴等滑りにくい靴の着用・滑り止めの装着、転倒の危険を減らす歩き方を知らせた上で注意を周知するといったものであったというべきである。
しかしながら、被告管理組合は、これらを行っていなかった。
なお、被告管理組合は、融雪剤等を購入し、原告が購入した本件マンションのb5棟以外に備え置いており、平成25年2月ころ、降雪時の雪かき・融雪剤の散布などへの協力を求める告知文書を全戸に配布してはいるが、本件マンションのb5棟において、本件転倒事故前に定期的に融雪剤の所在を示した上でその使用を促す周知はされていなかったと認められ、融雪剤の周知・提供についても、被告管理組合の義務違反が認められる。
したがって、被告管理組合に滑り止め等の提供又は注意喚起の安全配慮義務があり、その義務違反があったといえる。そして、被告管理組合がこれらを尽くしていれば、原告がこれに沿う対応をして本件転倒事故が発生しなかった蓋然性が認められるから、被告管理組合の安全配慮義務違反と原告の傷害の発生との相当因果関係は肯定される。

2 本件転倒事故前(平成30年1月22日ころから)の本件駐車場の状況、本件転倒事故時の目視で明らかな本件駐車場の積雪状況に加えて、原告が、本件転倒事故の前日も雪かきをしており、その際、本件転倒事故の場所付近において氷が凸凹していて歩きにくかったことを体験していたこと、本件転倒事故直前にも駐車場の入り口付近で除雪作業を行おうとしたが除雪器具が氷に引っかかってしまうなどして氷床を確認していたこと、本件転倒事故の際、除雪作業の動作をしていたわけではなく、除雪器具を両手に持って自車の駐車場所に向かって歩いていたにすぎないこと、本件転倒事故の際、ゴム長靴等滑りにくい靴を着用したり、靴に滑り止めを装着したりしておらず、歩幅を狭くし、足の裏をつけた「すり足」でゆっくり慎重に歩くなど積雪・凍結状況に対応した歩き方をしていなかったことが認められることを合わせ考慮すると、原告の過失は重大といわざるを得ず、75%の過失相殺をするのが相当と思料する。

裁判所としては過失割合でバランスをとったのでしょうが、判例のポイント1の安全配慮義務の具体的内容を見る限り、過保護な印象を受けますがいかがでしょう・・・。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。