義務違反者に対する措置24 区分所有者が違法な増築をしたこと等が共同利益背反行為に該当するとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が違法な増築をしたこと等が共同利益背反行為に該当するとされた事案(東京地判平成30年3月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有建物の管理組合法人である原告が、①区分所有者である被告住建に対して、滞納管理費+遅延損害金の支払を求めるとともに、②被告らに対して、被告らが、原告の管理権が及ぶ場所に建物又は建物様の物を所有又は占有し、被告住建の専有部分を駐車場以外の用途に使用していることが区分所有者の共同の利益に反する行為に当たると主張して、共用部分の管理権又は区分所有法6条1項、57条1項に基づきその除去を請求する事案である。

【裁判所の判断】

 被告住建は、原告に対し、914万5675円+遅延損害金を支払え。

 被告住建は、原告に対し、別紙物件目録記載第3の1で示す部分についての建物部分につき、建物様の壁、間仕切り、備品、その他一切の物ないし構造物を撤去せよ。

 被告住建は、原告に対し、別紙物件目録記載第3の2で示す部分の建物部分を収去し、同目録記載第4の3で示す土地部分を明け渡せ。

 被告住建は、原告に対し、別紙物件目録記載第3の3で示す部分の建物部分を収去し、同目録記載第4の4で示す土地部分を明け渡せ。

 被告住建は、原告に対し、別紙物件目録記載第3の4で示す部分の建物部分を収去し、同目録記載第4の5で示す土地部分を明け渡せ。

 被告a焼肉店ことY1は、原告に対し、別紙物件目録記載第3の2の建物部分から退去せよ。

 被告bリフォーム店ことY2は、原告に対し、別紙物件目録記載第3の3の建物部分から退去せよ。

【判例のポイント】

1 本件建物において、増築を行うことは、建築確認申請が行われていないこと、容積率の規制に反することから、違法な建築行為であり、これにより本件建物は、耐震補強工事を受けられない状態になっている
そうであれば、当該行為は、区分所有法6条、57条1項所定の「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当すると認められる。
そして、自らが上記増築をすることがなかったとしても、前主からこれを譲り受けることなどにより、かかる建物又は建物様の物を所有又は占有することは、増築行為と同様に、これにより本件建物の耐震補強工事を不可能にしているから、上記区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するというべきである。

違法な建築行為のみならず、多額の管理費等の滞納もありますので、共同利益背反行為に該当することは明らかです。

同種事案において、請求の趣旨をどのように記載すべきかについて参考になります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。