おはようございます。
今日は、未払管理費等請求における弁護士費用全額の請求が認容された事案(東京地判平成30年4月17日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの管理組合及び住宅部会が、マンションの区分所有者であり、もしくは区分所有者であった被告らに対し、①全体管理費及び全体修繕積立金、②住宅管理費、インターネット接続料及び住宅修繕積立金、③管理費等に対する各支払期限の日の翌日から支払済みまで規約所定の年14.6%の割合による遅延損害金、④管理規約に定めのある違約金としての弁護士費用、⑤本件弁護士費用+遅延損害金の支払を求めている事案である。
【裁判所の判断】
全部認容
【判例のポイント】
1 被告らは、不法行為に基づく損害賠償請求の場合との比較から、このような管理規約の不合理性を主張するが、被告らの挙げた例は、弁護士費用のうち不法行為と相当因果関係を有する損害と評価することのできる範囲に関するものであって、あくまで不法行為に基づく損害賠償請求に関する損害額の算定に関する問題であり、マンションの区分所有に関する管理規約に定められた違約金条項の内容の合理性とは次元を異にする問題である。
一方、実質論を主張するにとどまる原告の立論も首肯し難い(当事者数が多いとは言っても、特段、計算に難儀するほどの人数ではないし、訴訟係属期間が長期化したとは言っても、送達までに要した期間や和解調整に要した期間が長かっただけであり、実質的な争点整理事項は本判決掲記のとおりである。)。
もっとも、一般に、管理費を滞納した区分所有者に対して、未払管理費を請求する際に違約金としての弁護士費用を負担させるか否かという事項は、「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理」「に関する区分所有者相互間の事項」(区分所有法30条1項)に該当する事項であるところ、管理規約は、区分所有者間の利害の衡平(同条3項)の要請の下、特別多数決議(同法31条1項)によって定められるものであること、規約に定める要件に該当する場合には、全ての区分所有者が同様の義務を負うことになるものであること、実質的にみても、未払管理費の請求にかかる弁護士費用が極端に高額なものとなることは通常想定し難いことからすると、管理規約によって、未払管理費の請求に要した弁護士費用全額相当額の違約金支払義務を定めたからといって、それが不合理であるということはできない(なお、現に、マンション標準管理規約60条2項にも同様の規定が置かれているところである。)。
よって、このような管理規約の不合理性を前提として、一定額以上の違約金支払義務がないとする被告らの主張は、採用することができない。
2 被告Y1は、本件建物の共有持分比率が低い旨や、実際に本件建物に居住しておらず利用してもいない旨を主張する。
しかし、全体管理費、全体修繕積立金、住宅管理費、住宅修繕積立金が部屋の広さないし規格ごとに異なっている点からも明らかなように、一般に、管理費等は、利用利益の享受に対する対価という側面のみならず、建物全体の快適性や安全性、美観等の維持による資産価値ないし交換価値の維持という側面も有しているということができるのであって、建物の持分割合の高低や実際の居住ないし利用の有無にかかわらず、区分所有権を有する者であるがゆえに負担すべき性質のものであるというべきであるから、そもそも権利濫用の評価根拠事実として採用するに値しない。
本件訴訟は、原告が2名、被告が4名と、当事者が多数存在しますが、弁護士費用として32万4000円(税込)の請求全額が認容されています。
他の裁判例を確認する限り、もう少し高額であっても、裁判所は全額認容する傾向にあります。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。