管理会社等との紛争24 区分所有者が、購入時から20年間、敷地の一部を占有して時効取得したとする主張が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が、購入時から20年間、敷地の一部を占有して時効取得したとする主張が認められなかった事案(東京地判平成30年11月15日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件マンションの区分所有者である原告らは、購入時から20年間、敷地の一部である本件土地1・2を占有して時効取得したとして、共有持分権に基づき、本件土地1・2につき、
(1)他の敷地である本件土地3・4の共有持分1万分の848を有する原告X1においては、昭和46年9月14日時効取得を原因として、(ア)本件土地1・2の各共有持分4分の1を有する被告甲山Y1及び同Y6に対して所有権の一部(持分4万分の848)移転の登記手続を、(イ)本件土地1・2の各共有持分8分の1を有する被告甲山Y2,同甲山Y3,同甲山Y4及び同甲山Y5に対して所有権の一部(持分8万分の848)移転の登記手続を、それぞれするよう求め、
(2)本件土地3・4の各共有持分1万分の1331を有する原告X2においては、同年8月26日時効取得を原因として、(ア)被告甲山Y1及び同Y6に対して所有権の一部(持分4万分の1331)移転の登記手続を、(イ)被告甲山Y2、同甲山Y3、同甲山Y4及び同甲山Y5に対して所有権の一部(持分8万分の1331)移転の登記手続を、それぞれするよう求めている。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 時効制度は、長期にわたって継続した事実状態を尊重し、これに適合するよう権利の得喪を生じさせることで、社会秩序の安定を図ること等を目的とするものである。
このため、取得時効の完成に必要な占有は、権利者がこれを認識して時効中断の措置を執り得ることで権利の得喪に正当性が付与されるよう、物が社会通念上ある者の事実的支配に属すると認められる客観的状態にあることという占有権の成立に必要な占有だけでなく、権利者による事実的支配を排除するなど、客観的に明確な程度の排他的な支配状態が継続することを要するものと解される(最高裁昭和46年3月30日第三小法廷判決)。

2 本件土地1・2は、その上に本件マンション2階の居室部分や2・3階の各バルコニー・ひさし部分があることが認められ、本件マンションの法定敷地といえるから(区分所有法2条5項)、原告らは、本件マンションの各居室の所有権を取得し、引渡しを受けた後は、他の区分所有者らと共に本件土地1・2を共同占有していたものといえる。
しかしながら、甲山Aや被告甲山Y1を含むその相続人らは、昭和46年頃から少なくとも平成25年頃まで、N興業に対して本件土地1・2を駐車場として管理するよう委託し、N興業を通じて上記駐車場の利用者から賃料を得ていたことが認められ、本件土地1・2の所有者ないし共有者もこれらを占有していたものといえるから、原告らを含む本件マンションの区分所有者らは、本件土地1・2につき、客観的に明確な程度の排他的な支配状態を有していたものとはいえないというべきである。
そうであるから、原告らは、本件土地1・2につき、直接占有や間接占有の成否を問うまでもなく、時効取得に必要な占有を有していなかったものといえる(なお、原告らが南青興業に対して本件土地1・2を管理するよう委託したことを認めるに足りる証拠もない。)。
したがって、原告らは、本件土地1・2につき、時効取得に必要な占有を有していない。

時効取得における「占有」に関する最高裁の考え方を押さえておきましょう。

その上で、上記判例のポイント2において、具体的なあてはめを参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。