管理組合運営30 管理組合に対する薪ストーブの使用妨害禁止請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合に対する薪ストーブの使用妨害禁止請求が棄却された事案(東京地判平成30年12月20日)を見てみましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が被告である管理組合に対し、薪ストーブの使用に関する苦情を述べるなどの方法により、原告による上記薪ストーブの使用を妨害することを禁止することを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件建物と本件マンションは隣接しており、原告が本件薪ストーブを使用することにより、その煙、臭い、煤等が本件マンションの専有部分及び共用部分に及ぶ可能性を想定することができる。
もっとも、被告は、本件マンション管理組合であり、区分所有法3条前段所定の本件マンションの区分所有者全員を構成員とする団体であるところ、同団体は、建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体であるが(区分所有法3条)、専有部分はもとより共用部分についても、それらを不法に侵害する第三者に対する妨害排除請求権は、個々の区分所有者に帰属するものであって、管理組合に団体的に帰属するものではないと解される。
そうすると、被告が、訴訟を提起するなどして、本件薪ストーブの使用により本件マンションの専有部分又は共用部分が侵害を受けることを理由として、原告に対して本件薪ストーブの使用の禁止を求めることはできないものと解するのが相当である。

2 それに加えて、本件薪ストーブの使用について、本件調停は11回の期日を経て不成立となり、原告と被告は合意に至らなかったこと、被告が、本件訴訟において、弁護士を訴訟代理人として選任した上で、原告との間の調停が不成立となり合意が成立する見込みがなくなった現時点では、自ら原告に対して苦情、協議等を申し入れるなどの措置をとろうとは考えていない旨を主張したことを併せて考慮すれば、現時点において、被告が原告の本件薪ストーブの使用を妨害するおそれが存在するとは認められない。

上記判例のポイント1の「専有部分はもとより共用部分についても、それらを不法に侵害する第三者に対する妨害排除請求権は、個々の区分所有者に帰属するものであって、管理組合に団体的に帰属するものではない」という点はしっかり押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。