管理費・修繕積立金42 管理組合が亡区分所有者の相続人の1人に対し、未払管理費等につき、法定相続分である3分の1に相当する額の催告をしたところ、当該催告の時効中断効が、本件未払管理費等の相続債務全体に及ぶとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合が亡区分所有者の相続人の1人に対し、未払管理費等につき、法定相続分である3分の1に相当する額の催告をしたところ、当該催告の時効中断効が、本件未払管理費等の相続債務全体に及ぶとされた事案(東京地判令和4年2月18日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合である原告が、本件建物の共有者の一人である被告に対し、①管理費等の支払請求権に基づき、別紙滞納管理費等目録記載のとおり、平成16年11月分から令和3年9月分までの管理費、修繕積立金及び大規模修繕一時金+遅延損害金(請求の趣旨第1項)、
②管理規約に基づく弁護士費用等の支払請求権に基づき、59万9403円+遅延損害金(請求の趣旨第2項)、
③管理費及び修繕積立金の支払請求権に基づき、令和3年10月分から令和4年1月分までの合計8万0240円及び令和4年2月以降被告が本件建物の区分所有権を喪失するまで毎月6日限り各2万0060円(請求の趣旨第3項)、
④大規模修繕一時金の支払請求権に基づき、令和3年10月分から令和4年1月分までの1万8224円並びに令和6年2月まで毎月6日限り各4556円及び令和6年3月6日限り4493円(請求の趣旨第4項)の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、147万5192円+遅延損害金を支払え。
 被告は、原告に対し、28万4905円+遅延損害金を支払え。
 被告は、原告に対し、8万0240円及び令和4年2月から被告が別紙物件目録記載の物件の区分所有権を喪失するまで毎月6日限り各2万0060円を支払え。
 被告は、原告に対し、1万8224円並びに令和4年2月から令和6年2月まで毎月6日限り各4556円及び令和6年3月6日限り4493円を支払え。

【判例のポイント】

1 原告が令和3年6月5日に被告に対して本件通知書に係る催告をしたことは当事者間に争いがなく、原告が令和3年9月7日に本件訴えを提起したことは当裁判所に顕著である。
ところで、証拠によれば、本件通知書に係る催告のうち、Cが区分所有権を有していた平成16年11月分から平成28年6月分までの管理費等については、被告に対して法定相続分である3分の1に相当する額の催告をするにとどまっている
しかしながら、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件通知書は、家庭裁判所への照会を通じてD及びEの相続放棄の申述受理が判明する前に発送されたものと認められ、原告において他の相続人の相続放棄の事実を把握していたとも窺われない(なお、早期に時効中断の措置を執る必要があったことからも、家庭裁判所への照会前に本件通知書を発送したこともやむを得ないといえる。)。
また、本件通知書は、「故C氏から相続した(中略)管理費等支払債務の3分の1の金額」という表現がされており、相続債務であることが明示されていることに照らしても、債権者である原告としては、相続放棄により相続人の変動が生じているのであれば、債務者である被告の負担すべき相続債務全体について権利行使する意思があったと解することが可能である。
したがって、本件通知書による催告の時効中断効は、被告が支払義務を負う本件建物の管理費等の相続債務全体に及ぶというべきである。

2 原告は、原告訴訟代理人弁護士に対し、本件訴訟の提起及び追行を委任し、着手金18万8166円(請求金額の8%相当)及び報酬金37万6332円(認容額等の16%相当)の合計56万4498円の支払を約したことが認められる。
ところで、本件では、別紙滞納管理費等目録記載の滞納管理費等のうち番号1ないし番号139(同目録のおよそ3分の2)については、既に消滅時効期間が経過しており、本件通知書による催告以外の中断事由も窺われないことから、被告が消滅時効の援用をするか否か次第ではあるが、消滅時効期間が経過した管理費等については、請求が認容されない蓋然性が高かったといえる。
そうすると、被告の負担すべき弁護士費用としては、上記約定額の全額を負担させるのは相当とは認め難く、本件訴訟の内容及び経過等の事情を勘案すると、着手金及び報酬金を合算して25万円をもって相当と認める。

催告の時効中断効が及ぶ範囲に関する上記判例のポイント1の解釈は是非押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。