名誉毀損16 管理規約に違反して民泊行為を行っている旨が記載された招集通知の発送が名誉毀損にあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理規約に違反して民泊行為を行っている旨が記載された招集通知の発送が不法行為にあたらないとされた事案(東京地判令和4年3月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告らが、専有部分を区分所有するマンションに関し、被告は、虚偽の内容が記載された上記マンションの管理規約に基づく招集通知を上記マンション管理組合の全組合員すなわち上記マンションの区分所有者全員に発送するという不法行為に及んだとして、被告に対し、原告会社の信用、名誉毀損等による損害金合計400万円+遅延損害金の支払、原告X1の信用、名誉毀損による慰謝料100万円+遅延損害金の支払、別紙謝罪文の掲示及び上記全組合員に対する送付を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 区分所有法30条1項は、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、規約で定めることができる旨を規定している。
規約は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によって設定されるものであり(同法31条1項)、区分所有者によって構成される集会(同法38条参照)の意思決定によるものといえることから、その効力は区分所有者全員に及ぶものと解される。
同法46条は、1項において、規約の効力は区分所有者の特定承継人に対しても及ぶ旨を、2項において、占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約に基づいて負う義務と同一の義務を負う旨をそれぞれ規定しており、いずれの規定も規約の効力が区分所有者に及ぶことすなわち区分所有者は規約に従う義務を負うことを当然の前提としているものということができる。
原告らはいずれも本件マンションの区分所有者であるから、本件マンションの規約である本件管理規約に従う義務を負う
そして、本件管理規約第12条2項において「区分所有者は、原則としてその専有部分を特定たると不特定たるとを問わず、また多数たると少数たるとを問わず、他の第三者の一時的宿泊に供する等(会員制リゾート施設、ペンションの経営等)営業行為を行ってはならない。ただし、附属規程第9条(6)に基づき、届け出を行った上、理事会の許可を受ければこの限りではない。」と規定しており(以下「本件規定」という。)、いわゆる民泊行為が本件規定によって原則的に禁止されていることは明らかである。
原告らは、本件マンションにおいて民泊行為に及んでいるところ、証拠上、この民泊行為について、本件規定ただし書所定の本件理事会の許可を得ていることは、認められない
したがって、原告らの民泊行為は、本件管理規約に反するものといえ、その旨を記載した本件招集通知は、虚偽の内容を記載したものではない
以上によれば、原告ら主張に係る不法行為は、前提を欠き、成立しない。

民泊関連の事案では、本件同様、管理規約に定められた手続を経ているかどうかが主たる争点となります。

区分所有に関する紛争においては、裁判所は、管理規約の内容を極めて重視する傾向にありますのでご注意ください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。