おはようございます。
今日は、管理組合が自治会に加入し、管理費から自治会費を支払う旨の管理規約を定めることはできる?(東京地判令和4年7月20日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの区分所有者である原告が、原告が加入する区分所有法上の管理組合である被告に対し、以下の(1)から(3)までの請求をする事案である。
(1) 管理組合である被告が自治会に団体として加入し、管理費から自治会費を支払う旨の管理規約及び被告が自治会を脱退する場合には全体総会の特別決議を経る旨の管理規約がいずれも無効であることの確認請求
(2) 被告が令和2年4月26日及び令和3年4月25日に開催した各定期総会において、管理費から自治会費を支払う内容の予算案を承認した各決議がいずれも無効であることの確認請求
(3) 原告が被告に支払った管理費のうち、原告が自治会を退会した日以降に被告が支払った自治会費相当額5199円について不当利得に基づく返還請求
【裁判所の請求】
請求棄却
【判例のポイント】
1 団地管理組合は、当該団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物(以下「建物等」という)の管理を目的として当該団地内に存在する区分所有建物の区分所有者が当然に加入する強制加入団体であり(区分所有法65条)、その規約において、建物等の管理又は使用に関する事項を定めることができる(区分所有法66条、68条1項、30条1項。)。
ここにいう「管理」とは、建物等を維持していくために必要かつ有益な事項をいうものと解され、建物等の管理又は使用に関わりのない事項は、規約として定めても効力を生じないものと解される。
団地管理組合も団体の一種であるから、その活動の一環として、他の団体に団体として加入すること自体は否定されないものと解されるところ、他の団体への加入について規約で定める場合、上記のとおり規約において定めることができるのは建物等の管理又は使用に関する事項に限られ、また、「管理」とは建物等を維持していくために必要かつ有益な事項を指すと解されることからすると、当該団体へ加入することが建物等の管理又は使用に関する事項に該当し、建物等を維持していくために必要かつ有益であることを要することとなる。
そこで、本件自治会への加入が建物等の管理に該当し、建物等を維持していくために必要かつ有益といえる関係があるか否かについて検討する。
2 本件自治会は、被告が管理する建物等の対象範囲と活動地域が一致し、本件自治会の基本方針に本件各マンションの生活環境の改善・向上のための活動が含まれ、本件自治会は本件各マンションに係る防災・防犯・清掃活動、本件各マンションの価値の維持・向上に資する近傍の美化活動・住環境改善活動を行っていることからすると、本件自治会は、被告の建物等の管理に含まれる活動を基本方針とし、実際にも本件各マンションの建物等を維持していくために必要かつ有益な活動を行う団体であるといえる。
したがって、本件自治会に加入することを被告の規約に定めることは、建物等の管理に関する規約として被告の目的の範囲内ということができる。
上記判例のポイント1の最後に記載されている規範を押さえておきましょう。
そして、本件では、自治会への加入を規約で定めることも有効と判断されています。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。