おはようございます。
今日は、水道料立替金を区分所有者が管理組合に支払う旨の本件水道規約の有効性(静岡地判令和4年9月8日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理組合である被控訴人が、本件マンションの区分所有者である控訴人に対し、管理規約に基づき、①別紙債権目録「未納金」欄記載の平成29年1月から平成31年1月までの間の未払水道料立替金合計5万2395円+約定の年18%の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、②違約金としての原審段階の弁護士費用22万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
これに対し、控訴人は、水道料立替金及び違約金について定めた管理規約は無効であるなどと主張して、請求の棄却を求めた。
原審は、水道料立替金及び違約金について定めた管理組合の規約は有効であるとして、被控訴人の請求のうち、①については全部認容し、②については違約金としての原審段階の弁護士費用22万円+遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求は棄却したところ、控訴人は敗訴部分を不服として控訴した。
一方、被控訴人は、敗訴部分を不服として附帯控訴し、併せて、更に違約金としての当審段階の弁護士費用22万円+遅延損害金の支払を求めて請求を拡張した。
【裁判所の判断】
1 本件控訴を棄却する。
2 本件附帯控訴に基づき、原判決主文第2項を次のとおり変更する。
控訴人は、被控訴人に対し、44万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 区分所有法30条1項は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」と規定しているところ、「建物」については、文理上、共用部分に限定するものとは解されないから、共用部分だけでなく、専有部分についても、その管理や使用が区分所有者全体に影響を及ぼすような事項については規約で定めることができるものと解するのが相当である。
以上を踏まえて検討すると、本件マンションにおいては、本件マンション敷地内の給水管、受水槽、加圧式ポンプ、子メーター32戸分が本件マンションの共有物として設置され、これらの受水槽、ポンプ等の給排水施設は、管理規約8条別表第2に基づき共用部分とされ、管理規約21条に基づき、管理組合である被控訴人がその負担と責任において管理すべきものとされていること、本件マンションは、当初から親メーターで計量して受水槽により給水を受ける貯水槽水道設置方式で建築され、浜松市上下水道部との間では一括検針一括徴収方式を採用していることがそれぞれ認められる。
したがって、水道水が専有部分である各戸で使用されることから専有部分の使用に関する事項という面があるとしても、上記のとおり、水道水が共用部分である給水施設を経て各戸に供給され、水道水の供給の方式が浜松市上下水道部と管理組合である被控訴人の契約内容により決定されている以上、各戸の水道水の使用は必然的にこれらの施設管理及び契約内容による制約を受けるのであるから、管理組合である被控訴人が区分所有建物全体の使用料を立て替えて支払った上で、各区分所有者にその使用量に応じた支払を請求することを規約で定めることは、建物又はその附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項を定めるものとして、規約で定めることができ、このような内容の規約は有効であるものと解すべきである。
2 控訴人は、専有部分の水道料金は、特段の事情のない限り、区分所有法30条1項の建物又は附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項には該当せず、上記特段の事情とは、個別検針個別徴収方式への変更が法令や水道局の規定上できないことをいうものと解されるところ、本件では、かかる特段の事情は認められないなどと主張する。
しかしながら、水道水が専有部分である各戸で使用されることから、専有部分の水道料金が、専有部分の使用に関する事項という面があるとしても、本件マンションにおいては、水道水が共用部分である給水施設を経て各戸に供給されていることや、水道水の供給の方式が浜松市上下水道部と管理組合である被控訴人との契約内容により定められてきたことなどからすると、被控訴人において、区分所有建物全体の水道料金を一括立替払した上で、各区分所有者に対し使用量に応じた水道料立替金の支払を求めることについて、「建物又はその附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」として管理規約に有効に定めることができるものと解するのが相当であり、これが上記事項に当たらず、およそ管理規約で定めることはできないと解することは困難というべきである。
原審に引き続き、控訴審においても結論は変わりませんでした(理由付けは異なりますが)。
なお、原審判断はこちらです。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。