管理費・修繕積立金38 未払管理費等について和解に基づく債務名義がある場合に訴訟をする訴えの利益があるか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払管理費等について和解に基づく債務名義がある場合に訴訟をする訴えの利益があるか(東京地判平成28年12月8日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告が所有する区分所有建物を含むマンションの各区分所有者によって構成される権利能力なき社団である原告が、原告により定められた管理費、修繕積立金等の費用等を支払わない被告に対し、規約に基づき、滞納費用等のほか、未払町会費及びそれらの遅延損害金並びに提訴のための弁護士費用の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件において、被告が、原告の主張する金員を滞納していることに争いはない。
そこで、前件和解に基づく債務名義がある中で、本件訴訟をする訴えの利益があるかについてまず検討する。
被告は、本件滞納金の存在を認めながら支払をしない理由として、前件和解において、原告が本件確約をしたのに、それを履行しようとしないためにやむを得ず支払いを止めたと主張する。
原告が債務名義となる公正証書を所持している場合であっても、請求権の存在につき既判力をもって確定する必要がある場合には、訴えの利益が認められるところ(大審院大審院大正7年1月28日判決)、本件においては、被告が、原告の債務名義の行使について疑義を唱えているといえることからすると、既判力で確定する必要があるといえる。
よって、本件においては訴えの利益が認められる。

2 本件訴訟をする訴えの利益が認められ、被告に本件滞納金が存在することからすると、原告が、本件訴訟をする際、弁護士に委任し、それについてかかる費用については、管理規約65条2項により、被告において負担する義務がある。
原告は、本件訴訟につき、原告代理人との間で、着手金として請求額の8パーセント、報酬金として経済的利益の16パーセントを支払うとの委任契約を締結したことが認められる。
よって、被告は、原告に対して、上記の弁護士費用を負担する義務がある。
なお、被告は、原告において、本件確約を履行しないことを問題視し、るる主張するが、本件確約は、前件和解において、管理費等や町会費負担金を支払う条件等になっているわけではないから、仮に原告が本件確約を履行していないとしても、本件滞納金の支払拒絶事由になるとはいえない。
そして、本件滞納金が216万4607円であることは当事者間で争いがないから、被告は、原告に対し、消費税分を含め、着手金分として18万7022円、報酬金として37万4044円の合計56万1066円を支払う義務を負う。

既に債務名義がある場合であっても、必要に応じて提訴することが認められています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。