おはようございます。
今日は、専有部分の破損した窓ガラスの補修が「通常の使用に伴うもの」とされた事案(東京地判平成29年1月17日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの一室を所有する原告が、同室の窓ガラスが破損したとして、同マンションの管理組合である被告に対し、管理規約の規定に基づき、同窓ガラス及び窓枠の取替補修工事をするよう求めている事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件管理規約7条2項3号、14条1項及び25条1項によれば、本件窓ガラスは、原告の専有部分には含まれないものの、原告が専用使用権を有しており、その管理のうち「通常の使用に伴うもの」については、原告がその責任と負担においてこれを行うものとされている。
そこで、以下、本件破損の補修が「通常の使用に伴うもの」であるかについて検討する。
2 本件破損の原因については、原告の依頼により調査を行った一級建築士のDが、平成27年5月10日、「窓ガラスが割れていた原因は、そもそも出窓の取付が日光が集中的にあたる場所にあり、出窓の枢体及びガラスの老朽化に伴い、窓ガラスの一日の温度差により(温度差が大きい時に起こる)割れた可能性が最もあると一番考えられます。」と記載した報告書を作成しているところ、原告は、その記載内容を前提に、本件出窓ないし本件窓ガラスに構造上の欠陥があり、これが本件破損の主たる原因であると主張するのであるが、本件出窓が出窓であること自体や、日光がよく当たる場所に窓ガラスを配置することが、いずれも構造上の欠陥であるなどといえないことは明らかである。
3 次に、原告は、区分所有法9条の規定について主張するが、同規定は、建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じた場合の瑕疵の所在に係る立証責任について定めたものにすぎず、かかる規定の存在によって本件の争点についての判断が左右されるものではない。
また、原告は、経年劣化による窓ガラスの破損についての補修は計画修繕として行うべきであると主張するが、本件破損が経年劣化によるものであると認めるに足りる証拠はなく、原告の主張は前提を欠くものである。
そして、原告は、窓ガラスの破損が第三者による犯罪行為等によって生じた場合の責任についても主張するが、かかる場合と本件破損とを同視すべき理由はない。
4 以上によれば、本件破損の原因が被告にあるということはできず、また、その原因が本件窓ガラスの経年劣化にあるということもできず、そのほかに、本件破損の補修が「通常の使用に伴うもの」でないと解すべき理由はないから、本件破損の補修は、「通常の使用に伴うもの」であると認めるほかない。
したがって、本件破損の補修は、原告の責任と負担において行うべきものである。
窓ガラスが専有部分に含まれないということや「通常の使用に伴うもの」については区分所有者の責任と負担において管理するという知識は、各種試験でも問われる非常に基本的かつ重要な知識です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。