おはようございます。
今日は、大規模修繕工事の際に、立体駐車場部分の外壁等を修繕の対象から除かれたため、やむなく原告において自己の費用で修繕工事を行ったことを理由とする不当利得返還請求が棄却された事案(東京地判平成28年9月29日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの区分所有者である原告が、同マンションの管理組合である被告に対し、マンション大規模修繕工事の際に、マンションの立体駐車場部分の外壁等が修繕の対象から除かれたため、やむなく原告において自己の費用で修繕工事を行ったことで、法律上の原因なくして被告が修繕工事費用分の利得を得ているとして、不当利得に基づき、利得金の返還を求めるとともに、選択的に、被告の修繕義務の不履行に基づいて、上記費用支出額相当の損害の賠償を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 ・・・以上の検討結果を総合すれば、社会通念に照らし、本件立体駐車場部分は、本件マンションと一棟の建物として構成されず、別棟となるものと認められる(本件立体駐車場部分は、マンション敷地内の別棟の立体駐車場棟ということになるから、区分所有建物の建物部分ではない。)。
2 本件総会において、本件決議により、本件工事の対象に本件外壁が含まれないものとして多数決により承認可決されている。
本件外壁を含む本件立体駐車場部分が本件マンションとは別棟である以上、本件外壁を本件マンションの大規模修繕工事の対象に含めるか否かについて、集会の多数決の決議で決することとしても、本件管理規約に反せず、違法はない。
本件決議により、不利益を被ることが合理的に予想される原告及び原告関係者は、集会の議事進行手続において、質問し、異議を述べる機会を与えられており、実際にもCは異議を述べる等しているし、原告、C及びAは大規模修繕工事に関する議案(第5号議案)に反対の議決権を行使している。
そうだとすると、本件総会の招集手続、議事進行について、手続的瑕疵があったとは認められない。
なお、本件立体駐車場部分に関する前記検討結果を踏まえれば、平成11年工事と本件工事とで大規模修繕工事の実施範囲が異なる結果となったとしても、いずれも適法な多数決決議で行われたものであって違法な決議ではない。
以上によれば、本件外壁を大規模修繕工事対象に含めなかったことは適法な総会決議に基づく決議事項であり、このことをもって、不当利得にいう「法律上の原因がないこと(民法703条)」にはならない。
そうすると、原告の主張する不法利得返還請求権は理由がないことになる。
不当利得構成、債務不履行構成ともに要件を満たさないため、請求棄却となりました。
ちなみに、事務管理構成も本人の意思に反しないとはいえないため、こちらも難しいでしょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。