おはようございます。
今日は、マンション内の給油管が破損し、専有部分に灯油が漏出した事故により、シックハウス症候群等に罹患したとして、後遺障害等級12級に該当するとされた事案(札幌高判平成29年3月23日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、1審被告が管理していたマンション内の給油管が破損し、1審原告らが居住するなどしていた専有部分に灯油が漏出した事故により、シックハウス症候群等に罹患したとして、1審原告らが、1審被告に対し、それぞれ民法709条又は717条に基づく損害賠償として、1審原告X1につき3503万4216円、1審原告X2につき1494万5335円及び1審原告X3につき1506万8043円の損害賠償金+遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は、1審原告らの請求を、①1審原告X1の1審被告に対する319万7055円+遅延損害金、②1審原告X2の1審被告に対する95万5821円+遅延損害金、③1審原告X3の1審被告に対する109万6471円+遅延損害金の各請求の限度でそれぞれ認容し、その余を棄却したところ、1審原告ら及び1審被告はこれを不服として控訴した。
1審原告らは、当審において、通院旅費等及び弁護士費用(1審原告X1につき通院旅費等7万9160円及び弁護士費用351万1337円の合計359万0497円、1審原告X2につき通院旅費等7万9160円及び弁護士費用150万2449円の合計158万1609円、1審原告X3につき追加診察料等2万2000円及び弁護士費用150万9004円の合計153万1004円)+遅延損害金の請求を拡張した。
【裁判所の判断】
1審原告らの本件控訴及び当審における拡張請求に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) 1審被告は、1審原告X1に対し、607万6215円+遅延損害金を支払え。
(2) 1審被告は、1審原告X2に対し、723万3349円+遅延損害金を支払え。
(3) 1審被告は、1審原告X3に対し、774万3527円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 シックハウス症候群患者の多くは、眼、鼻、咽頭等の粘膜や皮膚の症状とともに、頭痛、倦怠感、めまい、吐き気などの神経症状を訴え、また、眼球運動や脳血流量の異常が認められる症例も報告されていることから、何らかのシックハウス症候群の原因物質が脳内に到達し、中枢神経系に作用している可能性が示唆されるところ、本件についてはC医師の実施した赤外線瞳孔計による自律神経機能検査、目視による眼球追従運動検査及び重心動揺計による平衡機能検査のいずれにおいても1審原告らの異常が認められ、中枢神経系の障害につき他覚的にも証明がなされているものといえる。
そうすると、1審原告らの後遺障害については、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(後遺障害等級12級13号)と評価するのが相当である。
シックハウス症候群について後遺障害に該当すると判断された事案です。
結果、原審から損害額が大幅に増額しました。
医学的な立証が求められますので、事前に相当入念に準備する必要があります。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。