管理会社等との紛争37 理事長や管理会社が原告である監事の監査業務を妨害したことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、理事長や管理会社が原告である監事の監査業務を妨害したことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(横浜地裁川崎支判平成29年3月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者であり、本件マンション管理組合の監事である原告が、被告らの行為により、原告の監査業務が妨害されるとともに原告の信用が毀損されたと主張して、不法行為に基づき、580万円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、原告が被告会社と連絡が取れていたから、被告らは、原告に対し、平成27年度監査報告書に記名押印するよう依頼すれば足りるのに、それをせずに、H社に監査報告書を作成させて、平成27年度の事業計画及び収支決算を通そうとし、故意に原告の監査業務を妨害したと主張する。
しかしながら、本件マンションの管理規約の37条1項によれば、本件管理組合の監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならないとされているのであるから、原告は、監査業務を行う意思があるのであれば、開催の通知を受けた理事会に出席すれば足りるところ、2回にわたって理事会を欠席したことは前述のとおりである。
そして、定期総会議案説明書の第2号議案には、副理事長が代行して監査結果を報告することに続けて、「なお、正式には、第8号議案で選任が予定されている管理組合役員の中から決定される監事に監査して頂き、後刻改めて書面にて結果をご報告します。」と記載されていることからすれば、平成27年度監査報告の監事欄に副理事長のH社が記名押印を代行したからといって、本件管理組合が平成27年度の監査を終了した扱いにしようとしたわけではなく、H社による記名押印の代行は、予定された期日(平成28年5月9日)に定期総会を開催するために形式を整えただけのいわば緊急避難的な行為と認めるのが相当である。
よって、被告らが原告を排除して平成27年度の事業計画及び収支決算を通そうとしたと評価することはできず、本件記録上、原告の監査業務を妨害したと認めるに足りる証拠はないから、原告の主張は理由がない。

故意に原告の監査業務を妨害したものではないと判断されるためには、しっかりと規約に則り、かつ、議事録や議案説明書等に具体的に状況を記載しておくことが有益です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。