管理会社等との紛争30 区分所有者による管理会社に対する頻繁な苦情の電話や書面交付が営業権侵害にあたる場合とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者による管理会社に対する頻繁な苦情の電話や書面交付が営業権侵害にあたる場合とは?(東京地判令和3年11月16日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、(1)マンションの一室を賃借して入居している原告が、賃貸人であり、上記マンションの管理に携わる被告に対し、被告は原告に対する嫌がらせをしたとして、不法行為及び賃貸人としての債務不履行に基づき、精神的損害160万円及び上記マンションのゴキブリ駆除に要した費用等20万円の支払並びに念書の作成を求めた事案(本訴)、
(2)被告が原告に対し、原告は、上記マンションの自転車駐輪場に無断駐輪していること、被告に対して頻繁に苦情の電話を入れたこと等によって被告の営業権を侵害したとして、不法行為に基づき、損害賠償金160万円の支払を求めた事案(反訴)である。

【裁判所の判断】

1 原告の請求をいずれも棄却する。

 原告は、被告に対し、3万3432円を支払え。

【判例のポイント】

1 被告は、原告から報告を受けたゴキブリの問題に関し、直接大きな被害を確認することはなかったものの、複数回にわたり入居者全員に文書を送付して排水口を清潔に保つことなどを呼びかける、入居者から2階廊下にゴキブリがいるとの報告を受けた後、直ちに入居者全員に殺虫剤を配布する、清掃業者から2回にわたり2階廊下にゴキブリの死骸があった旨の報告を受けた後、殺虫剤を2階廊下通路の雨水排水管に設置するという措置を講じている。
被告は、本件マンションの賃貸人及び管理を受託している者として、上記ゴキブリの問題を本件マンション全体の衛生に関わる問題として真摯に受け止め、把握した状況に即して適切に対応してきたものと評価することができ、法的義務の懈怠は認められない

2 原告からの苦情の電話は、令和元年5月から令和2年4月までの1年間に13回にとどまり、しかも、同月9日、被告が原告に対してこれ以上の電話対応をすることはできず、以後は書面対応とする旨を伝えたところ、その後、原告からの電話はなくなったというのであるから、原告が電話によって営業権の侵害と評価し得るほど被告の管理業務を侵害したとまではいい難い。
また、その後、原告は、被告に対し、相当数の文書を送付しているが、その内容に鑑みても、上記文書の送付によって営業権の侵害と評価し得るほど被告の管理業務を侵害したとまではいい難いところである。
もっとも、今後、原告が上記のとおり被告から書面対応を求められているにもかかわらず、苦情の電話を被告にかける行為に及べば、営業権侵害に当たる可能性がある。
また、書面についても、その内容や頻度等によって被告が対応につき過重な負担を強いられて管理業務に支障を来す事態に至れば、営業権侵害を構成し得る

区分所有者の対応に苦慮する管理会社のみなさんは、前記判例のポイント2を参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。