おはようございます。
今日は、区分所有者が旧所有者から使用貸借契約の貸主たる地位を承継したと判断された事案(東京地判平成30年1月30日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理組合である原告が、本件マンションの共用部分である本件建物について、被告が権原なく被告所有の山車を置いてこれを占有していると主張して、本件マンションの区分所有者から訴訟追行権を授与された訴訟担当者として、被告に対し、区分所有者の所有権に基づき、本件建物の明渡しを求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件マンションの区分所有者が本件使用貸借契約の貸主たる地位を承継したか否かについて検討すると、本件においては、本件使用貸借契約が締結される前の平成20年5月当時において、既に、T社から本件マンションの購入者に対する重要事項説明書により、①本件建物が共用部分であることが明示された上で、②本件建物について、T社と被告の間に本件山車を保管又は展示することを目的とする使用貸借契約が締結されること、③同契約が本件マンションの管理組合設立後には当該管理組合に承継されることが明記されている。
そうであるとすれば、T社から本件マンションを購入した者は、本件建物について被告との間で本件山車の保管等を目的とする本件使用貸借契約が締結され、それが原告側に承継されることを前提として、本件マンションの区分所有権を取得したものと認めるのが相当である。
2 原告は、本件使用貸借契約がT社の行為の結果を区分所有者に一方的に押し付けるものであって不当である旨を指摘する。
しかし、①T社から区分所有権の購入者に重要事項説明書を通じて本件使用貸借契約の存在や概要が説明されてきたことや、②その後も長年にわたり、原告側から被告に対して本件使用貸借契約の成否や承継の有無等について特段の疑義が呈されてきた形跡が見当たらないことは、前記のとおりである。
かかる事情に照らすと、区分所有者においては本件使用貸借契約を前提として区分所有権を購入したものと認めるほかはなく、そうである以上、区分所有権の取得の経緯から見て、本件使用貸借契約の内容が区分所有者にとって不意打ちになるものと評価することはできないから、原告の上記指摘は採用することができない。
使用貸借契約の貸主たる地位が区分所有者に承継されたと判断されたことにより、被告に占有権原が認められた事案です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。