おはようございます。
今日は、原告の閲覧請求の申出に対して管理組合が訴訟提起はもう少し待ってほしい旨伝えていたにもかかわらず、原告がいきなり本件訴訟を提起したという経緯がある場合、訴訟費用を原告に負担させるべきか(東京地判平成30年3月28日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、区分所有者である原告が、管理組合に対し、帳票類の閲覧を請求した事案である。
【裁判所の判断】
被告は、原告に対し、aマンションの第18期会計年度(平成29年2月1日から平成30年1月末日まで)の2月から8月までの帳票類(諸費用の請求書、支払指示書等、仕訳帳及び総勘定元帳)の閲覧及び閲覧の際の写真撮影をさせよ。
【判例のポイント】
1 原告は、被告代表者が区分所有法26条4項に定められた訴訟追行権の授権を受けておらず、区分所有者のために被告となることができない旨主張する。
しかし、本件訴訟は、管理組合を被告として帳票類の閲覧を請求する事案であり、区分所有者が被告となるべき事案ではないから、被告代表者が被告を代表して応訴するに当たり、上記授権を受ける必要はない。
2 被告は、訴訟費用の負担について、原告の閲覧請求の申出に対して被告は適切に対応しており、訴訟提起はもう少し待ってほしい旨伝えていたにもかかわらず、原告がいきなり本件訴訟を提起したという経緯があるから、これを原告に負担させるべきである旨主張する。
しかし、訴訟費用は、原則として敗訴の当事者の負担とされ(民事訴訟法61条)、勝訴の当事者に不必要な行為があった場合や勝訴の当事者が訴訟を遅延させた場合に、その全部又は一部を勝訴の当事者に負担させることができるにすぎない(同法62条及び63条)。
これを本件についてみると、被告の上記主張は、本件訴訟において原告が不必要な行為をしたことや原告が本件訴訟を遅延させたなどという指摘を含んでおらず、本件記録によってもこのような事実を認めることはできないから、本件訴訟の提起や本訴請求を行うこと自体の適否が問題とされておらず、上記のとおり本訴請求が認容されるべきものである以上、訴訟費用については、民事訴訟法61条を適用し、その全部を被告の負担とするほかない。
上記判例のポイント2は、実務においては基本的なことですので、しっかりと理解しておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。