おはようございます。
今日は、管理組合によるマンションに接する前庭における飲食店の営業禁止請求が棄却された事案(東京地裁平成30年3月29日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、権利能力なき社団であるマンション管理組合の理事長である原告が、同マンションの区分所有者である被告補助参加人から区分建物を賃借して飲食店を経営している被告に対し、同マンションの管理規約及び使用細則に基づき、①同建物に接する前庭にゴミ等を置くことの禁止、②同建物に接する前庭の一部に設置された支柱、テント及びビニールカーテンの撤去、③同建物に接する前庭における営業の禁止を求めるものである。
【裁判所の判断】
1 被告は、別紙物件目録記載の建物に接する別紙の朱線部分表示の箇所に存するテント及びビニールカーテンを撤去せよ。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
【判例のポイント】
1 原告は、aマンションの居住者から、本件飲食店が本件前庭において営業しているため、客の話し声や笑い声がうるさいなどという苦情が本件管理組合に寄せられている旨主張し、本件前庭周辺から本件前庭の音の大きさを測定したという書面を提出する。
同書面には、平成28年6月7日、同月8日、同年7月15日、同月20日、同年8月31日、同年9月2日の6日間の集音結果である(午後7時22分から午後11時30分までの間の一時点の計測結果であり、日によって集音時刻が異なる。)として、最低値55.6デシベル、最高値68.9デシベルが計測された旨の記載がある。
しかしながら、計測に用いた器械や具体的な計測状況がどのようなものかは不明であって、そもそも上記の測定結果の信用性には疑問も大きい。
また、仮に上記の測定結果が信用できるとしても、上記で認定したaマンションの周辺状況に照らして、本件前庭における本件飲食店の営業によって発生した音の大きさを示すものであるかも不明であるといわざるを得ない。
さらに、仮に上記の測定結果が信用でき、それが本件飲食店の営業により発生した音であるといえるとしても、あくまでも特定の日の特定の時刻のものにすぎず、それが「騒音」であって、居住者に迷惑を及ぼす行為である(本件細則4条13号)と評価することができるかは疑問である(aマンションの居住者からの苦情の有無及び内容に関して、具体的に、どのような苦情が、どの程度の頻度で寄せられたのかなどを認めるための証拠はない[原告が、5軒の居住者から騒がしい、臭いが気になるといった苦情があったと述べるのみである。]。)。
2 原告は、本件規約14条によれば、本件前庭は「通常の庭として」使用することに限られ、本件前庭において飲食店を営業することは、これを逸脱する旨主張する。
確かに、本件規約上、本件前庭の用法につき、「通常の庭としての用法」と定められていることは原告主張のとおりであるが、そもそも、本件建物は、店舗又は事務所としての利用が予定されており(本件規約12条1項)、店舗の種類には制限が設けられていないこと、被告補助参加人が本件建物においてエスニック雑貨店「b」を営業している際(昭和56年頃~平成25年頃)には、本件前庭に商品を陳列するなどして、本件前庭をその営業のために利用してきたところ、このことを本件管理組合が問題視したことはなかったことからすれば、本件建物を利用する店舗が、その営業のために本件前庭を使用することが、「通常の庭としての用法」を逸脱すると解することはできない。
実際、飲食店のお客さんの声がうるさかったのでしょうが、訴訟で騒音問題を主張する場合には、事前に適切かつ相当な準備をしなければ、裁判所は請求を認めてくれません。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。