おはようございます。
今日は、各種迷惑行為に対する差止め請求につき、弁護士費用147万円の支払が命じられた事案(東京地判平成30年12月7日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、被告が、本件居室において、①非常用ボタンを押したままの状態にする行為(以下「本件迷惑等行為①」という。)、②本件居室において、ガス設備の法定点検のための専門業者の立入りを拒絶する行為(以下「本件迷惑等行為②」という。)、③本件マンションのゴミ置場において、ゴミ袋を開けて中のゴミを一つ一つ確認する行為(以下,「本件迷惑等行為③」という。)といった迷惑等行為(以下、本件迷惑等行為①ないし③を併せて「本件各迷惑等行為」という。)をしているとして、区分所有法57条に基づいて、本件各迷惑等行為の差止め、並びに、本件マンションの管理規約63条4項に基づき、本件訴訟の提起に要した弁護士費用147万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
1 被告は、別紙物件目録記載の建物において、非常用ボタンを押したままの状態にしてはならない。
2 被告は、別紙物件目録記載の建物において、ガス設備の法定点検のための専門業者の立ち入りを拒絶してはならない。
3 被告は、別紙物件目録記載の一棟の建物(aマンション)のゴミ置き場(別紙配置図の赤線の枠内の部分)において、ゴミ袋を開けて中のゴミを一つ一つ確認する行為をしてはならない。
4 被告は、原告に対し、147万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 以上説示したとおり、本件各迷惑等行為をいずれも認めることができ、これらはいずれも本件マンションの区分所有者である居住者の共同の利益に反する行為であるといえる。
そして、被告が、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合には、原告は、区分所有者の共同の利益のために、集会の決議を経た上で、その差止めを求める訴訟を提起できるところ、本件訴訟の提起について集会の決議を経ている。
したがって、原告の被告に対する本件各迷惑等行為の各差止めを求める訴えは、いずれも理由がある。
2 第二東京弁護士会報酬会規は弁護士報酬を算定する上で合理的な基準であると認められるところ、これによれば、本件のように経済的利益を計算することができない場合は、経済的利益の額を800万円と評価するとされており、経済的利益の額を800万円として同会規に基づいて弁護士報酬を計算すると、弁護士費用として適正な金額は次の内訳により147万円であると認められる。
①着手金 49万円(=300万円×8パーセント+500万円×5パーセント)
②報酬金 98万円(=300万円×16パーセント+500万円×10パーセント)
したがって、原告の被告に対する147万円+遅延損害金の支払を求める訴えは理由がある。
上記判例のポイント2のように、弁護士報酬の計算に合理性が認められる場合には、金額が高額であっても裁判所は認めてくれます。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。