おはようございます。
今日は、規約に弁護士費用の算定方法について規定がない場合における弁護士費用の認定方法(東京地判平成31年2月27日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの管理組合である原告が、同マンションの区分所有者である被告に対し、同マンションの管理規約に基づき、未払管理費、修繕積立金及び専用使用料+遅延損害金、弁護士費用90万7870円+平成30年4月から毎月27日限り月額46万7840円の割合による将来の管理費、修繕積立金及び専用使用料の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
1 被告は、原告に対し、998万6570円+遅延損害金を支払え。
2 被告は、原告に対し、平成30年4月から被告が原告を脱退するまでの間、毎月27日限り月額46万7840円の割合による金員を支払え。
【判例のポイント】
1 原告が区分所有者から徴収する管理費等は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるものであり(本件規約23条1項)、専用使用料は管理費に充当されるものであり(本件規約27条1項)、いずれも本件マンションの敷地及び共用部分等の管理という不可分的な利益の対価であるものと認められる。
また、本件規約62条4項に基づき被告が支払義務を負う弁護士費用は、上記のような不可分的な利益の対価の支払債務の不履行によって生じる違約金であるものと認められる。
以上に照らせば、本件請求債権に係る支払債務は、いずれも性質上の不可分債務に当たるものと認められる。
したがって、店舗①及び店舗②について持分を有する被告は、本件請求債権の全部について支払義務を負うものというべきである。
2 被告は、本件規約62条4項に基づき、本件訴訟に係る原告の弁護士費用を負担すべき義務を負うものというべきである。
本件規約には、負担すべき弁護士費用の算定方法について定めがないから、同項は相当額の弁護士費用の請求を認めているものと解するのが相当である。
そして、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、損害額の1割程度の額の弁護士費用が不法行為と相当因果関係を有する損害と認められるのが一般的であることに照らせば、本件訴訟についての相当額の弁護士費用は、本件未払管理費等及び専用使用料合計907万8700円の1割である90万7870円を下らないものと認めるのが相当である。
上記判例のポイント2は、あくまで一例にすぎません。
違約金としての弁護士費用の請求は、委任契約において弁護士費用についてどのように合意するかが非常に重要です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。