騒音問題10 マンション屋上の換気扇の騒音につき、慰謝料請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンション屋上の換気扇の騒音につき、慰謝料請求が棄却された事案(東京地判平成31年1月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの住民である原告が、マンション管理組合である被告組合に対し、マンションの屋上にある換気扇が修繕、交換されず、その換気扇の騒音により、精神的苦痛を被っていると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料200万円+遅延損害金の支払を求めるとともに(第1事件)、マンション管理組合の理事長である被告理事長に対し、マンションの屋上にある換気扇が修繕、交換されず、その換気扇の騒音により、精神的苦痛を被っていると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料231万円及び弁護士費用23万1000円+遅延損害金の支払を求める(第2事件)事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 平成27年5月27日から平成30年2月20日までの間に、701号換気扇については、少なくとも5回の交換作業等が実施され、702号換気扇については、少なくとも4回の交換作業等が実施され、本件換気扇の音の701号への騒音レベルは、被告組合の理事会で承認された専門業者によっては、測定されていない
以上の事実によれば、701号における本件換気扇による具体的な騒音の状況は明らかでないと言わざるを得ず、本件換気扇の交換作業等が約3年の間に複数回行われていることからすれば、原告の前記供述を直ちに採用することはできず、701号において、社会通念上受忍すべき限度を超えた違法な騒音が生じていることを認めるに足りる証拠はない。
したがって、本件換気扇の交換作業等が不十分であり、本件換気扇の修繕交換が必要であることを認めるに足りる証拠はない。

2 本件換気扇は、aマンションの屋上に設置されており、建物共用部分に該当し、当該部分は、被告組合が管理する部分である。そして、区分所有者である原告は、建物共用部分を改造したり、排他的な使用をすることを禁止されている。
したがって、本件換気扇は、被告組合が管理する部分であり、被告組合が、自ら又は管理会社を通じて、保全、保守、修繕、変更等を行うものであって、原告提案①及び原告提案②についての判断は、被告組合の理事会決議事項、あるいは、被告組合の総会決議事項に該当する。
そのため、被告組合の理事会又は被告理事長が、被告組合の理事会等の決議の要否及び可否を判断するに当たって、専門業者による本件換気扇の音の701号への騒音レベルの測定を求めること、この701号への騒音レベルの測定を経ずに、原告の費用によって、あるいは、原告に委任して、本件換気扇を交換することを許容しないことが、不合理であるということはできず、このような測定の要求をすること等が、本件換気扇の騒音問題の解決を妨害することに当たるということはできない

騒音問題については、事前に専門業者に測定を依頼することが求められます。

過去の裁判例を見る限り、自身で測定をしても、裁判所は証拠価値を認めない傾向にありますので注意が必要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。