おはようございます。
今日は、合計約100万円の管理費、修繕積立金等の滞納が共同利益背反行為に該当するとされた事案(東京地判平成31年1月10日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理組合の理事長である原告が、本件居室の区分所有権を有する被告に対し、原告が可能な法的手続を尽くしたにもかかわらず被告の未払管理費、未払修繕積立金及び未払自転車置場使用料が増加する一方であることから、被告が共同の利益に反する行為をしており、これにより共同生活上の障害が著しく、他にとる方法が存在しないと主張して、区分所有法59条1項に基づき、本件区分所有権及びその敷地利用権の競売を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【裁判所の判断】
1 本件マンションの区分所有者が本件管理組合に支払うべき管理費等は、本件マンションの管理や修繕に充当されるべきものであるため、これらの管理費等を滞納することは、本件マンションの管理に関し、「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するといえる。
また、本件管理組合の管理規約上、訴訟等の費用は当該組合員が負担する旨定められており、仮にこれが支払われないとすると、管理組合の財産を損なうことになるので、同じく「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するといえる。
被告は、管理費及び修繕積立金合計1万9340円を毎月支払う義務があるところ、平成30年5月31日現在の被告の未払管理費及び未払修繕積立金の合計は35万1240円となっており、18か月分を超える額となっている。また、訴訟等の費用として、104万7080円の支払を怠っていることから、これらが本件マンションの管理に関し、「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当することは明らかである。
なお、被告又はb社が、本件訴訟係属中に本件管理組合に対して、8万円ずつ支払をしているが、被告及びb社の管理費、修繕積立金及び駐車場使用料の合計額は8万5560円であり、これに満たないのであり、管理費の滞納があることに変わりはない。
2 被告の本件居室に対する強制執行手続が平成29年6月20日に無剰余で取り消されていること、被告の資力が回復したような事情はうかがわれないことからすると、現時点において、本件区分所有権等につき通常の強制競売等を申し立てて競売開始決定を得たとしても、再び無剰余取消しとなることが見込まれる。
また、被告自身、現時点において弁済することは困難であり、2年待ってほしいと述べているとおり、滞納管理費等が自主的に早期に解消される見込みはない。
したがって、区分所有法59条1項に基づく本件区分所有権等の競売以外の「他の方法によってはその障害を除去して…区分所有者の共同の生活の維持を図ることは困難」(同条項)であるといえる。
上記判例のポイント2の要件もありますのでお忘れなく。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。