おはようございます。
今日は、管理組合に対する区分所有者名簿の最終更新時以降の月次報告書のうち入退去者欄の閲覧、謄写請求が棄却された事案(東京地判平成31年3月7日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの一室を区分所有する原告が、同マンションの管理組合である被告に対し、管理規約等に基づき、区分所有者名簿及び同名簿の最終更新時以降の月次報告書のうち入退去者欄の閲覧、謄写を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件各情報は、本件マンションの区分所有者である特定の個人を識別することのできる個人情報に当たり、また、被告は、法の改正により、同情報の取扱個人数による制限が撤廃されたことによって、法所定の個人情報取扱事業者に当たることとなっている。
そうすると、被告は、法23条1項により、その組合員の同意がない限り、あるいは、同条項各号所定の事由がある場合を除き、保有する個人情報データベースにある本件各情報を第三者である原告に提供することが許されないというべきである。
なお、原告は、被告の組合員ではあるものの、他の組合員に係る個人情報との関係では、前同条項にいう第三者に当たると解すべきである。
2 そこで、法23条1項の上記各事由の有無について検討するに、本人(組合員)の同意については、被告の第34回総会における審議の結果からすれば、これが被告において正式な決議といえるかをおくとしても、少なくとも、組合員による同意が得られたとは認められない。
また、個人情報取扱事業者は、個人情報を取得する際、「構成員(本件では組合員)の名簿を作成し、掲載構成員に対し配布すること」といった事項を利用目的として特定し、これを本人(本件では組合員)に通知、公表すれば、これをもって個別の同意を得たものと解する余地がある。
しかしながら、被告においては、個人情報の利用目的につき、名簿の作成・配布を掲げていないことが認められるから、あらかじめ特定された利用目的によって、組合員の同意に代えるものと解することはできない。
さらに、原告の開示請求が、同条項各号所定の事由に基づくものであるとも認められない。
管理組合運営においては、個人情報保護法の理解も求められますので十分気を付けましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。