おはようございます。
今日は、管理組合に対する会計帳簿等の閲覧・謄写請求が棄却された事案(東京地判令和元年5月15日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、平成18年頃、本件マンションの401号室の区分所有者となり、現在、被告管理組合の組合員である原告が、被告管理組合に対し、民法645条又はaマンション管理規約54条に基づき、平成6年度から平成29年度までの被告管理組合の会計帳簿、組合員名簿、通帳その他の帳票類一切の閲覧、謄写を求めるとともに、被告管理組合及び同被告から業務委託を受けている被告会社において、原告が権限に基づき平成18年頃から現在まで上記帳票類全部の閲覧、謄写を求めたにもかかわらず、部分的な閲覧しか認めず、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、被告らに対し、不法行為に基づき、慰謝料等の損害賠償金166万0824円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 ①原告は、少なくとも、本件マンションの管理組合の平成18年から平成21年までの総会に出席しながら、特に、総会において、管理組合の収支等について異議を述べた形跡はないこと、②平成21年の総会後に(原告が)被告会社に対して閲覧請求をしたのに対し、被告会社は、その保管している資料を全て原告に開示していること、③その後、原告は、平成27年まで被告らに対して閲覧請求をしていないこと、④同年から平成28年にかけてされた(原告を代理した)D弁護士の請求に対して、被告らは、少なくともその請求に係る資料は全て原告側に開示して、原告において適宜写真撮影もしていたこと、⑤被告管理組合では、平成22年の法人化以後、監事が選任されて、その収支報告は、監事の監査を経て、総会に議案として上程され、賛成多数で承認されていることが認められる。
2 そうすると、被告管理組合としては、そもそも、法人化後の収支等については、監事の監査を経て総会の承認を得るという正規の手続を経ており(なお、その手続において、原告が具体的に問題を指摘して監事に報告を求めるなどした形跡はない。)、そこに、特段の不合理があることをうかがわせる証拠はないから上述した補充性を欠く上、原告の閲覧請求に対して、被告管理組合(又は被告会社)は、(法人化前の残存資料を含め)開示すべき資料は全て原告に開示しているといえるから、原告が本件訴訟において閲覧等を求めるのは、実質的に重複請求であるともいえる。そして、そのような請求を正当化するだけの理由は認められない。
したがって、原告の被告管理組合に対する閲覧請求は理由がなく、そうである以上、これに付随する謄写請求についても理由がない。
上記のとおり、裁判所は、開示すべき資料は既に全て開示済みであると認定しました。
管理規約等は、このような場合にまで重複請求を認めるものではありませんので、結果、請求棄却となりました。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。