管理組合運営23 管理組合により役員に就任する順番を定めた輪番制から除外されたことが不法行為には該当しないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合により役員に就任する順番を定めた輪番制から除外されたことが不法行為には該当しないとされた事案(東京地判令和元年12月5日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

被告は、本件マンションの区分所有者全員をもって構成される管理組合であり、原告は、本件マンションの805号室の区分所有者であり、同室に居住している。
本件は、原告が、被告において、被告の役員に就任する順番を定めた輪番表から正当な理由なく原告を除外したことにより、原告が被告の役員に選任され得る地位を侵害するとともに、原告に精神的苦痛を与えた旨を主張して、被告に対し、原告居室の区分所有者としての権利に基づき、本件輪番表に原告居室を記載することを求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料50万円を支払うことを求める事案である。

【裁判所の判断】

判例のポイント

【判例のポイント】

1 区分所有者が集会において議案を提案することができることは、区分所有建物の管理権の行使に関わり、区分所有者の集会が多数決で運営されていることの前提をなすものというべきであって、区分所有者が議案の提案に関し法的保護に値する利益を有していることに鑑みると、本件管理規約51条9項は、議案の修正動議の提出を否定するものとは解されない。

2 この点に関し、平成25年5月26日の被告の総会において、原告が提出した修正動議につき採決が行われなかったことがあったことも認められるが、平成29年12月23日に被告の理事会において原告居室が24期役員輪番表から外された後、被告の総会において、提出者が原告であるか否かを問わず、修正動議の提出自体が否定されたことがあったとは認められず、平成29年12月23日以降においても、原告の修正動議の提出が否定されるものであったことを認めるに足りる的確な証拠はない。

3 以上の検討によれば、原告は、原告居室が24期役員輪番表から外された後も、被告の総会において、役員の改選に係る議案に関し、自らを被告の役員の候補者とする旨の修正動議を出すことで、容易に被告の役員の候補者となることができたというべきであるから、本件地位は、法的保護に値するものとは認められない。
したがって、原告居室が本件輪番表から除外されたことは、原告に事実上の不利益を生じさせるにとどまり、この措置によって、原告が何らかの権利又は法的保護に値する利益を侵害されたとは認められないから、争点3以降については判断するまでもなく、被告の原告に対する不法行為は成立しない。

輪番制から外されたことは原告に「事実上の不利益」を生じさせるが、「何らかの権利又は法的保護に値する利益」が侵害されたとは認められないとの判断です。

裁判所による微妙な匙加減のため、評価のしかたによっては、ぎりぎりのところで結論が異なり得ると思われます。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。