おはようございます。
今日は、専有部分をシェアハウスに供することが共同利益背反行為に該当するとされた事案(東京地判令和2年1月16日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理組合法人である原告が、本件建物の賃借人である被告Y2による本件建物の使用が直接・間接を問わずに別紙2に定めるところの「シェアハウス」に供することを禁止する本件マンションの管理規約に違反して、区分所有者の共同の利益に反する(区分所有法6条1項)旨を主張して、被告Y2及び本件建物の区分所有者である被告Y1に対し、法57条1項により、直接・間接を問わずに「シェアハウス」に供することの禁止を求めるとともに、本件訴訟に関して支出する弁護士費用相当額は被告Y1の規約違反行為による損害である旨を主張して、被告Y1に対し、本件マンションの規約に基づき損害金100万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
被告Y1は、各建物について、いずれも、直接・間接を問わず、「シェアハウス」に供してはならない。
被告Y1は、原告に対し、100万円+遅延損害金を支払え。
被告Y2は、各建物について、いずれも、直接・間接を問わず、「シェアハウス」に供してはならない。
【判例のポイント】
1 原告は、本件改正後の本件管理規約12条2項が、①本件マンションのセキュリティーを保全・確保すること、②犯罪などの不安要因・不確定要素を排除すること、③豊島区マンション管理推進条例で義務付けられている居住者名簿の作成を可能とすることを目的とするものであると主張するところ、上記各目的のために、専有部分を、直接・間接を問わず、「シェアハウス」に供することを禁止することは、高度な必要性及び合理性があるとはいえないものの、一定の必要性及び合理性があるものと認められる。
したがって、本件改正後の本件管理規約12条2項に違反する行為は、法6条1項に規定する「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるものといえる。
そして、本件行為は、本件改正後の本件管理規約12条2項に違反するものであることは、前記認定のとおりである。
以上によれば、本件行為は、法6条1項に規定する「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるというべきである。
2 原告は、甲事件の訴えの提起に当たり、弁護士費用着手金として32万4000円の請求を受けていることが認められる。
そして、原告は、弁護士に甲事件を依頼しており、仮に甲事件に勝訴すれば、その成功報酬として相当額を支払わなければならないことは明らかである。
これに加え、甲事件の難易その他本件に顕れた全事情を総合すると、甲事件に係る弁護士費用及び差止め等の諸費用の合計額が100万円を下回るものではないことが認められる。
したがって、被告Y1が支払うべき違約金の額を100万円と認めるのが相当である。
同種の裁判例を傾向からしますと、このような結論になることは特段違和感がないところです。
上記判例のポイント2のように、違約金として弁護士費用相当額が認容されるのが区分所有事案の特徴です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。