管理会社等との紛争12 倒産した管理会社が管理費等の預金口座を管理会社名義で管理していた場合、管理組合は自らの資産であると主張できるか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、倒産した管理会社が管理費等の預金口座を管理会社名義で管理していた場合、管理組合は自らの資産であると主張できるか(東京高判平成11年8月31日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、倒産した管理会社が管理費等の預金口座を管理会社名義で管理していた場合、管理組合は自らの資産であると主張できるかが争点となった事案である。

原審は、同口座は管理会社に帰属すると判断した。

【裁判所の判断】

同口座は管理組合に帰属する。

【判例のポイント】

1 預金者の認定については、自らの出捐によって、自己の預金とする意思で、銀行に対して、自ら又は使者・代理人を通じて預金契約をした者が、預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で預金をしたなどの特段の事情がない限り、当該預金の預金者であると解するのが相当である。

 本件各定期預金の原資である管理費等は、管理会社が管理規約及び管理委託契約に基づいて区分所有者から徴収し、保管しているものであって、管理会社の資産ではなく、大部分は各マンションの保守管理、修繕等の費用に充てられるべき金銭である。

3 区分所有者から徴収した管理の費用は、管理を行うべき管理組合に帰属するものである。管理組合法人が設立される以前の管理組合は、権利能力なき社団又は組合の性質を有するから、正確には総有的又は合有的に区分所有者全員に帰属することになる。
したがって、本件各定期預金の出捐者は、それぞれのマンションの区分所有者全員であるというべきである。

4 管理会社は、本件定期預金を自己の預金、資産であるとは考えておらず、管理会社はこれを各マンションの区分所有者ないし管理組合に属するものとして取り扱っていたものである。

5 以上のとおり、本件各定期預金の預金者は、各マンションの区分所有者の団体である管理組合であり、区分所有者全員に総有的ないし合有的に帰属すると認めることができる。

今は昔の事件ですが、考え方の参考になる裁判例です。

この事件以降、マンション管理適正化法が制定され、管理業者に対する法規制がされることとなり、今となっては当たり前の「財産の分別管理義務」が規定されました。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。