おはようございます。
今日は、管理費の滞納のある区分所有建物を競売により買い受けた者が支払った滞納管理費を元の所有者に求償することの可否(東京高判平成17年3月30日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
被控訴人は、平成16年1月21日、控訴人所有の本件建物及びその敷地権を競売により買い受け、その所有権を取得したところ、控訴人は、管理祖合に対し、管理費、修繕積立金及び組合費(本件管理費等)を滞納していた。
本件は、被控訴人が、控訴人が滞納していた本件管理費等219万5500円を平成16年5月21日、管理組合に対し代位弁済したと主張して、控訴人に対し、求償金219万5500円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
控訴人は、本件管理費等の滞納分については、本件競売事件の物件明細書等にそれが明示されており、競売の最低売却価額からも既に控除されているから、滞納分は被控訴人が負担すべきであると主張して争った。
原審は、被控訴人の請求を全部認容したので、控訴人が控訴した。
【裁判所の判断】
原判決を次のとおり変更する。
控訴人は、被控訴人に対し、219万5500円+遅延損害金を支払え。
*控訴審は、原判決を一部変更しているが、これは遅延損害金の始期を、代位弁済の翌日ではなく、訴状の送達日の翌日としたもの。
【判例のポイント】
1 控訴人は、本件建物等の所有権が被控訴人に移転するまでの間の本件管理費等について支払義務を負っている。ところで、区分所有法8条は、同法7条1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる旨規定しており、これによれば、被控訴人は、本件管理費等の滞納分について、控訴人の特定承継人として支払義務を負っていることは明らかである。
これは、集合建物を円滑に継持管理するため、他の区分所有者又は管理者が当該区分所有者に対して有する債権の効力を強化する趣旨から、本来の債務者たる当該区分所有者に加えて、特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり、債務者たる当該区分所有者の債務とその特定承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解されるから、真正連帯債務についての民法442条は適用されないが、区分所有法8条の趣旨に照らせば、当該区分所有者と競売による特定承継人相互間の負担関係については、特定承継人の責任は当該区分所有者に比して二次的、補完的なものに過ぎないから、当該区分所有者がこれを全部負担すべきものであり、特定承継人には負担部分はないものと解するのが相当である。したがって、被控訴人は、本件管理費等の滞納分につき、弁済に係る全額を控訴人に対して求償することができることとなる。
2 控訴人は、物件明細書等に本件管理費等の滞納分が明示されていることや最低売却価額における控除の措置がされていること等から滞納分は被控訴人が負担すべきであると主張する。
しかしながら、物件明細書等の競売事件記録の記載は、競売物件の概要等を入札希望者に知らせて、買受人に不測の損害を被らせないように配慮したものに過ぎないから、上記記載を根拠として本件管理費等の滞納分については当然買受人たる被控訴人に支払義務があるものとすることはできない。
本件では、滞納分に見合った最低売却価額の減額がなされているという事情があるため、上記判例のポイント2記載の控訴人の主張は理解できなくもないところですが、裁判所の判断は判例のポイント1のとおりです。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。