おはようございます。
今日は、漏水及び火災警報器の誤発砲の原因究明及び解決を怠ったことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(東京地判令和3年8月25日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告が被告から建物を賃借している中で、被告が、当該建物に発生した漏水及び火災警報器の誤発報の原因究明及び解決を怠ったことが修繕義務及び使用収益をさせる義務に違反し、また、当該違反を是正せず、不合理な説明に終始し、原因究明を打ち切ったことが、原告の有する継続して居住する利益を侵害する不法行為に該当するとして、転居費用及び慰謝料等合計205万7670円の損害賠償+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 被告は、本件誤発報①及び②について、上階からの漏水を疑い、801号室、802号室及び901号室の実地調査を行ったこと、その結果、漏水の原因が判明せず、むしろ801号室の天井にも漏水の痕跡があったことを確認したこと、一方、同じ時期に、1202号室の浴室から漏水が生じたことが判明し、1202号室の漏水を止水したところ、以後、漏水の事象が発生しなくなったことが認められ、被告は、これらの調査結果や状況を踏まえ、本件誤発報①及び②の原因となった漏水の発生源は、1202号室の浴室の漏水であると判断したものといえる。
原告は、このような推論は不合理である旨を主張するが、マンションにおいては、排水管などが階を貫いて設置されており、このような排水管の表面を伝って、漏水が生じることは当然あり得るものといえ、被告の判断が不合理であるとは認められない。
2 また、本件誤発報③については、階も全く異なるものであって、誤発報の状況も、発生した部屋の表示が出ないなど異なる事情があることから、被告として、原因が感知器に何かをぶつけたか、消防隊が訪問して異常がなかった301、302、307以外の部屋で、ライターやたばこなどを感知器付近で一時的に使用したことにあると判断したものであって、このような判断も不合理であるとはいえない。
さらに、本件誤発報④については、インターホンのメーカーによる調査の結果、基盤に不良があるとの判断で、交換作業が行われたことからすると、本件誤発報④の原因は、本件誤発報①及び②の原因とは異なるものであり、既に修繕がされたものといえる。
以上によれば、被告は、本件誤発報について、その原因を順次調査検討し、必要な修理を行ったものといえ、被告において、修繕義務を怠ったとはいえない。
原告として、立て続けに火災報知機の誤発報が生じたことや、直ちに原因が判明せず、判明した原因も直ちに首肯しうるようなものではなかったことから、被告の対応について不満を募らせたことは理解しうるが、そうであるからといって、被告の対応に債務不履行があったとまではいえないことは上記のとおりである。
結果責任を問われるわけではありませんので、判断や対応に合理性が認められれば、管理責任は問われません。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。