管理会社等との紛争9 チラシ投函拒否の表示に反する行為が不法行為にあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡) 

おはようございます。

今日は、チラシ投函拒否の表示に反する行為が不法行為にあたらないとされた事案(東京地判令和2年2月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、控訴人の居住するマンション1階の集合郵便受に、被控訴人作成のチラシ1枚が投函されたことについて、1階部分への立入禁止の表示及びチラシ投函拒否の表示に反する行為であって、不法行為を構成するとして、慰謝料10万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審が控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【裁判所の判断】

1 本件チラシを控訴人の郵便受に投函した行為は、明示的に示された本件マンション管理組合の意向及び控訴人の意思に反する行為であるが、そのような意向ないし意思に反する行為であるからといって、直ちに違法であるということはできず、当該行為が違法になるか否かについては、その行為の態様が、社会通念上一般に許容される受忍限度を超える侵害をもたらすものであるか否かによって判断すべきである。

2 これを本件についてみるに、本件マンションの敷地部分と前面通路との間に塀等による仕切りはなく、本件マンションの玄関階段棟の入り口のガラス扉も施錠されてはいない。
本件マンションの玄関部分に設置してある集合郵便受に投函するためには、玄関部分に立ち入ることは必要であるが、本件マンションが玄関階段棟と住居棟に分かれていることからすれば、現実に住民が居住する住居棟内に立ち入る必要はない。
配布された本件チラシは、一見して市議会議員の活動報告等の文書であることが分かるものであって、紙1枚にすぎず、詳細を確認せずに廃棄することも容易な文書である。
以上のとおり、本件チラシの投函行為は、物理的な強制力を用いたものではなく、立ち入った程度も住民が居住する区域ではなく玄関部分のみであって、配布された本件チラシの内容・分量も上記の程度であることに鑑みると、一般的に受ける不利益の程度も、社会的に受忍し得る限度を超えるものではないと認定するのが相当である。
控訴人は、本件チラシの投函行為が、建造物侵入罪を構成すると主張するが、建造物侵入罪の成立を認めた最高裁の判例の事案とは、建造物への立入りの態様が異なる。
したがって、本件チラシの投函行為は、不法行為を構成しない。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

このように客観的に見れば瑣末な問題でも訴訟に発展することがあります。

本件は、チラシを投函した団体を被告したものですが、場合によっては、管理が不十分との理由か管理会社等も被告とされることがあります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。