おはようございます。
今日は、新聞販売店の従業員がマンション敷地内の人目につくところで排便を繰り返していたことを理由とする慰謝料請求が認められた事案(東京地判令和3年3月26日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの居住者である原告ら125名が、被告は新聞販売店を経営してAを使用していたところ、新聞配達中のAが上記マンションの敷地内の人目につくところで排便を繰り返し、これにより原告らは精神的損害を被ったと主張して、被告に対し、民法715条1項に基づく損害賠償請求として、原告らそれぞれに慰謝料5万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
被告は、原告らそれぞれに対し、5000円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件各行為は、未明の、人があまり出歩かないような時間帯とはいえ、本件マンションの敷地内の人目につくところに排便をするというものである。これは、Aによる嫌がらせを目的とした行為とまでは認めるに足りないものの、行為自体が嫌悪感を催させるものである上、残置された便により悪臭を発生させるなどしたと考えられること、排便行為は、1か月半ほどの間隔のある二日間にわたり、繰り返し行われており、本件マンションの住民において、強い嫌悪感を抱くようなものであることはもとより、恐怖感を覚えたとしても不自然ではないといえるものでもあること等に照らせば、本件各行為は、原告らの本件マンションにおける平穏な居住の権利を侵害するものとして、不法行為となるというべきである。
2 この点に関し、被告は、本件各行為が行われたのが人目につきづらい場所であること、被告は通知を受けて速やかに配達員を交代し、その後同様の事態が発生していないことからすると、本件各行為は悪質とはいえず、原告らの受忍限度の範囲内である旨主張する。
しかし、本件各行為が行われた場所は、オートバイ駐輪場や駐輪場を利用する者が通行することが想定される通路であり、人目につきづらい場所とはいい難い。
また、本件各行為が行われた後の事情を考慮しても、本件各行為が原告らの受忍限度の範囲内といえるような、違法性の弱いものとはいえない。
したがって、本件各行為は、原告らに対する関係で、不法行為法上違法なものといえる。
世の中には、いろいろな人、いろいろなトラブルがあります。
本件は、管理組合が原告ではなく、マンション居住者125名が原告となり、慰謝料請求をした事案です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。