おはようございます。
今日は、総会決議なく修繕積立金を取り崩して工事代金を支払ったことの違法確認請求訴訟が却下された事案(東京地判令和3年7月20日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
被告が平成27年6月25日に総会決議なく修繕積立金を取り崩して工事代金287万円を支払ったことが、被告の管理規約28条、48条に違反することを確認する。
本件は区分所有法所定の区分所有者である原告が、区分所有者全員で構成される管理組合である被告につき、前記の内容のとおり被告の管理規約に違反する行為があったとして、その確認を求める事案である。
【裁判所の判断】
訴え却下
【判例のポイント】
1 まず、確認の対象について見ると、原告の請求は、要するに本件支出が本件管理規約に違反していたという意味で違法であることの確認を求める趣旨と解される。
これは現在の権利又は法律関係に当たらないことは明らかであり、そして仮にそのような違法が確認されたとしても、そのことが原告と被告との間の個別的な権利又は法律関係につき基本となるような理由を直ちに見出すことはできず、原告と被告との紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切・必要とは言い難い。
併せて、仮に本件支出の違法が確認されたとしても、後の平成27年総会決議において本件支出を含む収支決算報告が可決されていることに照らせば、直ちに紛争の抜本的な解決に資するとは解し難い。
この点においても、本件支出の違法を確認することが適切・必要とは言い難い。
2 また、即時確定の利益について見ても、現に原告の有する権利又は法律的地位についてどのような危険又は不安が存在するかが不明であり、これを除去するために本件支出の違法を確認することが必要かつ適切であると言える理由も見出せないと言うほかない。
よって,確認の利益は認められない。
3 なお、当裁判所は、原告に対し、仮に自身の損害賠償請求権等が発生していると考えるのであれば、その権利との関係で確認の利益に関する主張を補充するよう釈明した。
この釈明を受けて提出された準備書面を見ても、「組合財産の棄損」などという表現は見られるものの、原告の現在の権利又は法律関係との関係は明らかでなく、主張の趣旨は不明確と言わざるを得ない。
本件は本人訴訟であるため、裁判所は原告に対して比較的丁寧に釈明していますが、奏功しなかったため、訴えを却下しています。
訴訟物の判断は、一般の方には難しい場合があり、設定を誤ると勝訴確率が大幅に落ちますので注意が必要です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。