おはようございます。
今日は、屋上部分の瑕疵を原因とする漏水について管理組合法人の工作物責任が認められた事案(東京地判令和2年2月7日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
原告は、被告が共用部分を管理しているマンションの最上階の居室を所有している。
本件は、原告が、上記マンションの共用部分である屋上部分の瑕疵のため、上記居室に漏水が生じて損害を被った旨主張し、民法717条1項本文に基づき、被告に対し、口頭弁論終結時までに具体化した損害として461万4034円の賠償+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
被告は、原告に対し、380万4512円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件マンションの最上階にある本件居室に生じた本件漏水は、本件マンションの共用部分である屋上部分の瑕疵によるものと認められる。
被告は、本件漏水が共用部分に起因することを否認するが、他の原因を具体的に主張立証するものではなく、また、被告自身、本件漏水の対策工事として、屋上の笠木部分等にシーリング充てん等を行う本件対策工事を行っているのであり、上記の否認には理由がない。
以上によれば、被告には、本件漏水について、民法717条1項本文に基づく責任があると認められる。
2 原告は、本件賃借人退去後の平成29年11月1日から令和元年12月31日までの26箇月間の賃料相当額が本件漏水と相当因果関係のある損害である旨主張する。
本件賃借人が退去したのは本件漏水が原因であると認められる。
被告は、本件居室の相当賃料額が10万円であることを争うほか、本件居室の稼働率が100%となるものではない旨主張する。
しかし、本件賃借人は、平成19年9月に本件賃貸借契約を締結してから10年間にわたり本件居室に居住していたものであり、本件漏水以外に、あえて本件賃貸借契約の解約を図る事情があったことはうかがわれない。
そうすると、少なくとも令和元年12月31日までは、本件賃貸借契約は維持され、本件賃借人は本件居室に居住し続けていたと認めるのが相当である。
また、仮に本件賃貸借契約が継続していたとして、同日までに、本件賃借人が賃料の減額を求めたことをうかがわせる事情も認められない。
3 原告は、本件に関する立会のため有給休暇を11日使用したとして、11日分の収入額を本件漏水による損害として主張する。
確かに、原告は、本件漏水のため、本件賃借人から損害賠償を求められ、調停の申立てもされるなどして、一定の対応を要したことは認められる。
しかし、自らが有給休暇を取得して対応しなければならなかった具体的必要性ないし原告の対応の具体的内容を認めるだけの証拠はない。
また、本件漏水に係る損害として、一定の弁護士費用を認めることをも考慮すれば、原告の休業損害を本件漏水と相当因果関係のある損害と認めることはできないというべきであり、原告の上記主張は採用することができない。
漏水事故が発生した場合の損害(特に消極損害)をどのように認定するかについては、同種事案の裁判例が参考になります。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。