管理費・修繕積立金12 団地の管理組合が、総会において、管理組合規約のうち管理費等の負担割合に関する定めを変更する決議をしたところ、団地を構成する商業棟や敷地の共有持分を有する原告らの権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団地の管理組合が、総会において、管理組合規約のうち管理費等の負担割合に関する定めを変更する決議をしたところ、団地を構成する商業棟や敷地の共有持分を有する原告らの権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するとされた事案(札幌地判令和2年4月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件本訴請求及び承継参加に係る訴えは、本件団地の管理組合である被告管理組合が平成28年4月24日に開催した第10回通常総会において、管理規約のうち、管理費等の負担割合に関する定めを変更することを内容とする本件規約変更決議をしたところ、本件規約変更決議は、団地建物所有者である従前原告らの権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当し、区分所有法66条、31条1項後段、本件規約変更決議時の管理規約51条5項によれば、従前原告らの承諾が必要となるにもかかわらず、被告管理組合は、その承諾を得ることなく、本件規約変更決議をしたとして、従前原告らが、本件規約変更決議は無効であることの確認を求める事案である。

本件反訴請求に係る訴えは、本件規約変更決議によって従前原告らが支払うべき管理費等の金額が増額となり、その支払うべき管理費等の金額は月額107万1040円となったにもかかわらず、従前原告ら又は原告らは本件規約変更決議以前の管理費等の金額である月額81万9550円を支払うにとどまっているとして、本件規約変更決議後の管理規約の定めに基づき、同年8月から令和元年12月までの41か月分の管理費等について、従前原告ら又は原告らが支払うべき管理費等の金額と支払済みの管理費等の金額の差額(月額25万1490円×41か月分)である1031万1090円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

平成28年4月24日に開催された被告管理組合の第10回通常総会においてされた決議は、無効であることを確認する。

被告管理組合の反訴請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1  区分所有法31条1項後段は、区分所有者間の利害を調整するため、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定めており、ここでいう「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される(最判平成10年10月30日)ところ、同法66条によって同法31条1項後段を準用する場合及び同項後段の下に定められた旧規約51条5項の趣旨も同様であると解される。

2 旧規約における団地管理費等の負担割合を定める方法は、新規約におけるそれと比して合理性を欠いていたものとはいえず、本件規約変更の必要性及び合理性が高かったとはいえない一方で,従前原告らは、団地管理費等に係る本件規約変更によって実質的な利益を得ていないにもかかわらず、本件規約変更前と比して大きな負担の増加を強いられることとなり、その均衡を失しているものといわざるを得ない。
ところで、従前原告らは本件商業業務棟の共有者であり、被告管理組合の組合員の大半は、本件住居棟の区分所有者であるところ、本件商業業務棟の共有者と本件住居棟の区分所有者では、本件団地の利用方法、利用価値が、営業活動の場であるか生活の場であるかという点で大きく異なることは明らかである。
しかしながら、本件住宅棟以外団地共用部分を構成する設備や本件敷地の状況に照らせば、本件住宅棟以外団地共用部分及び本件敷地のうち、屋内通路等、本件住居棟の区分所有者のみがその利益を享受し得るものはあるが、本件商業業務棟の共有者のみがその利益を享受可能なものは必ずしも多くはなく、少なくとも、本件商業業務棟の共有者において本件敷地及び本件住宅棟以外団地共用部分から受ける利益が、本件住居棟の区分所有者が受けるそれと比して大きいとはいえない
この点、団地型規約においては、団地管理費等を定めるに当たり、使用頻度等は勘案しないこととしているが、団地型規約が本件団地に直ちに適用されるわけではないことに加え、本件規約変更に伴って従前原告らが受ける不利益の程度を検討するに当たって、このような実態を考慮することは、必ずしも禁止されるものではないと解される。
このような本件住宅棟以外団地共用部分及び本件敷地の利用実態にも照らせば、本件規約変更決議のうち団地管理費等の負担割合を定める方法を変更する部分は、本件商業業務棟の所有者(共有者)に与える不利益がその受忍限度を超えていると認められる。
したがって、同部分の変更は、従前原告らに対して「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当する。

本件では、複合団地において商業棟と住宅棟の各区分所有者間での比較衡量が行われています。

区分所有法31条1項後段の解釈においては、団地型規約に関する考え方(使用頻度等は勘案しない)がストレートに妥当しないことが書かれています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。