管理組合運営16 総会において原告が管理組合法人の役員(理事長)に立候補したにもかかわらず議案に掲げられなかったことが不当とはいえないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会において原告が管理組合法人の役員(理事長)に立候補したにもかかわらず議案に掲げられなかったことが不当とはいえないとされた事案(東京地判令和2年2月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件物件の区分所有者である原告が、本件物件の管理組合法人である被告に対し、①被告の役員の選出手続が適正に行われていないなどと主張して、被告の役員を選出する手続を行うことを求め、②本件総会の議長が原告であるべきはずであったのに、他の者が議長とされたなどと主張して、本件総会の議長が原告であったことの確認を求め、③被告がその理事の地位にあると主張するB、C、D、E及びF並びにその監事の地位にあると主張するGは、いずれも理事又は監事の資格を有しない旨主張して、本件役員らがそれぞれ被告の理事又は監事の資格を欠格していることの確認を求め、④上記Gが監事の資格を有しない結果、被告には監事が存在しない旨主張して、被告に監事が存在しないことの確認を求め、⑤本件役員らが役員として主催した被告の総会が無効であると主張して、被告の設立以降に開催された総会の決議が無効であることの確認を求める事案であると解される。

【裁判所の判断】

本件訴えのうち、定時総会の議長が原告であることの確認を求める部分を却下する。

原告のその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 原告は、被告の役員が本件物件の区分所有者の中から選任されるべきであり、本件総会において自らが理事長に立候補したのに議案に掲げられなかったことから、被告が役員を選出する手続をすべき義務を負う旨主張する。
しかしながら、区分所有法及び本件管理規約において、管理組合法人である被告の役員が本件物件の区分所有者でなければならないことを定めた規定は見当たらない
そして、本件管理規約において、被告の役員は、本件物件の管理組合にて区分所有法上の管理者を務めていたA社の推薦する本件物件の管理事務につき専門的知識と経験を有する者を、総会にて選任するものとされているところ、この本件管理規約の定めによれば、本件総会に当たり原告がA社から推薦されていなかった以上、被告の役員(理事長)に立候補したことが議案に掲げられなかったこともやむを得ないというべきである。

2 原告は、平成30年11月17日に開催された本件総会の議長が原告であることの確認を求めている。
しかしながら、本件総会は既に行われたものであり、かつ、総会の議長であったか否かは事実関係の存否の問題であるから、本件議長確認請求は、過去の事実関係の確認を求めるものであるということができる。
そして、本件総会の議長が原告であったことの確認をすることが、原告の現在の法律関係に関する法律上の紛争を抜本的に解決するために必要かつ適切であると認めることができない以上、本件議長確認請求は、確認の利益を欠く不適法な訴えであるといわざるを得ない。
なお、本件物件の管理規約においては、「総会の議長は理事長又は理事,若しくは理事長の指定する代理人が務める。」こととされているところ、本件総会においては、被告の理事長から代理人として委任された本件従業員が議長を務めたのであり、その手続に瑕疵も認められないし、本件管理規約の上記規定によれば、原告が、被告の理事長又は理事でなく、理事長から代理人として指定されたこともなかった以上、本件総会の議長であったとは認められない。

本件同様、規約により役員の選任要件が限定されている場合、その要件に合理性が認められる限りは、裁判所も当該規約を尊重します。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。