おはようございます。
今日は、マンションの1室に居住する原告らが、同居室の階上の居室を所有する被告に対し、被告の居室から発生する騒音(幼稚園生が居室内を歩行して発生させた騒音)の差止め及び損害賠償が認容された事案(東京地判平成24年3月15日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告X1が、マンション内に同人が所有する居室の階上の居室を所有する被告に対し、所有権ないし人格権に基づく妨害排除請求として、被告所有の居室から発生する騒音の差止め並びに不法行為(被告の子が被告所有の居室内を歩行して騒音を発生させた。)に基づく損害賠償請求として94万0500円+遅延損害金を、X1の妻で同人所有の前記居室に同居する原告X2が、被告に対し、不法行為(前同)に基づく損害賠償請求として32万4890円+遅延損害金の支払を、それぞれ求めるものである。
【裁判所の判断】
被告は、原告X1に対し、被告所有の建物から発生する騒音を、同原告が所有する建物内に、午後9時から翌日午前7時までの時間帯は40dB(A)を超えて、午前7時から同日午後9時までの時間帯は53dB(A)を超えて、それぞれ到達させてはならない。
被告は、原告X1に対し、94万0500円+遅延損害金を支払え。
被告は、原告X2に対し、32万4890円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 被告の子が204号室内において飛び跳ね、走り回るなどして、104号室内で重量衝撃音を発生させた時間帯、頻度、その騒音レベルの値(dB(A))は、静粛が求められあるいは就寝が予想される時間帯である午後9時から翌日午前7時までの時間帯でもdB(A)の値が40を超え、午前7時から同日午後9時までの同値が53を超え、生活実感としてかなり大きく聞こえ相当にうるさい程度に達することが、相当の頻度であるというのであるから、被告の子が平成20年当時幼稚園に通う年齢であったこと、その他本件記録から窺われる事情を考慮しても、被告の子が前記認定した程度の頻度・程度の騒音を階下の居室に到達させたことは、204号室の所有者である被告が、階下の104号室の居住者である原告らに対して、同居者である被告の子が前記程度の音量及び頻度で騒音を104号室に到達させないよう配慮すべき義務があるのにこれを怠り、原告らの受忍限度を超えるものとして不法行為を構成するものというべきであり、かつこれを超える騒音を発生させることは、人格権ないし104号室の所有権に基づく妨害排除請求としての差止の対象となるというべきである。
2 原告らがそれぞれ受けた精神的苦痛に対する慰謝料額としては、各30万円が相当である。
原告X2は平成20年8月25日、同年6月ころから出現した頭痛等の症状を訴え、医師により自律神経失調症との診断を受け、通院を開始し、治療費・薬代として合計2万4890円を支出したことが認められ、前記診断の結果に照らすと、原告X2の前記症状は、本件不法行為に起因するものと認められ、前記金額の治療費・薬代は本件不法行為と相当因果関係がある損害と認められる。
原告X1は、本件不法行為に係る騒音の測定を訴外会社に依頼し、平成20年9月17日、同社に対し、その費用・報酬として64万0500円を支払ったことが認められ、同費用は、本件請求のための費用ではあるが、客観的な騒音の測定は本件不法行為の立証のために必要不可欠なものであり、同測定は訴外会社等の第三者の専門家に依頼することが必要不可欠であるから、前記程度の費用額は、本件不法行為と相当因果関係がある損害と認められる。
原告側の騒音の存在及び原因の立証が成功した事案です。
入念な準備が必要不可欠であることがよくわかります。
騒音問題の解決には、多額の費用、多大な労力及び時間を要することがよくわかります。
なお、本件で原告が請求した騒音の差止めは、「40dB(A)を超えて到達させてはならない」というものでしたが、裁判所が認容したのは、上記裁判所の判断記載とおり、時間帯によって判断を分けています。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。