ペット問題12 マンションの区分所有者である被告らが規約等によって動物を飼育することが禁止されているにもかかわらず、犬ないし猫を飼育するおそれがあると主張して、その飼育禁止を求めた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、マンションの区分所有者である被告らが規約等によって動物を飼育することが禁止されているにもかかわらず、犬ないし猫を飼育するおそれがあると主張して、その飼育禁止を求めた事案(東京地判平成18年2月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴は、マンションの区分所有者全員により構成された団体である本訴原告が、同マンションの区分所有者である本訴被告らは、規約等によって、マンションの専有部分で動物を飼育することが禁止されているにもかかわらず、犬ないし猫を飼育するおそれがあると主張して、本訴被告Y1に対しては犬の飼育禁止を、本訴被告Y2に対しては猫又は犬の飼育禁止をそれぞれ求めている事案である。

反訴は、反訴原告らが、反訴被告に対し、反訴被告(本訴原告)による本訴の提起は反訴原告(本訴被告)らに対する不法行為を構成すると主張して、不法行為による損害賠償を求めている事案である。

【裁判所の判断】

本訴請求認容

反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、ペットを飼育している居住者らの意見を聞く機会を設け、全居住者に対するアンケートを行うなどして、ペット飼育に関する本件マンションの居住者の意向を調査した上、本件臨時総会を開催したところ、同総会において、本件動物飼育禁止条項の改定案は否決され、ペット飼育を終了させるための措置に関する議案が可決された。
そこで、原告は、本件臨時総会の議決に従って、被告Y1に対しても、ペットの飼育を任意に終了させることを試みたが、同被告は、期限及び条件を遵守する旨の誓約書を提出せず、誓約書未提出者の意見陳述会にも欠席し、結局、同被告がペット飼育終了届を提出したのは、猶予期間から4か月以上経ってからであった。しかも、同被告は、その後も本件建物1で犬を飼育し、原告の当時の理事長や代理人弁護士からの飼育中止の要請に対して、一時的な飼育は禁止されていないなどと弁解して、これに従おうとしなかった。
以上の経過からすると、ペット飼育問題に関する被告Y1の対応は、不誠実なものといわざるを得ず、同被告は本件動物飼育禁止条項を遵守しようとする意識に乏しいものと認めざるを得ない。
これらの諸事情に照らせば、被告Y1には、今後も本件建物1において犬を飼育するおそれがあると認められる。

2 原告は、本件臨時総会の議決に従って、被告Y2に対しても、ペットの飼育を任意に終了させることを試みたが、同被告は、原告からの度重なる働きかけに対して何らの対応もせず、ペットを飼育していた区分所有者らの中で、同被告のみが未だにペット飼育終了届を提出していない。
そして、被告Y2は、本訴に係る答弁書において、「原告は今まで一度も話し合いに来たことはない。今までのペットに関する審議、議決には作為があり、一切無効である。責任者は辞任だ。ルールを決めてペット飼育を可能にしてはどうか。」などと、本件臨時総会に至る経緯や本件臨時総会での議決内容、更には原告からの度重なる働きかけを全く顧みない主張をしている。
以上のことからすると、ペット飼育問題に関する被告Y2の対応は、極めて不誠実なものといわざるを得ず、同被告は本件動物飼育禁止条項を遵守しようとする意識に乏しいものと認めざるを得ない。
これらの諸事情に照らせば、被告Y2には、今後も本件建物2において猫又は犬を飼育するおそれがあると認められる。

裁判所は、これまでの経緯、被告らの不誠実な対応を考慮し、犬猫の飼育禁止請求を認容しました。

なお、このような差止め請求は、具体的な実害の発生は要件とされていません。

また、判決に基づき強制執行をする場合には、間接強制によることになりますので注意しましょう(直接強制はできません)。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。