おはようございます。
今日は、管理規約に管理組合保管の書類の閲覧請求を認める規定のみがある場合における謄写請求をすることの可否(東京高判平成23年9月15日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの区分所有者である被控訴人らが、本件マンションの管理組合法人である控訴人に対し、平成18年度ないし平成20年度の控訴人の総勘定元帳、現金出納帳、預金通帳及びそれらを裏付ける領収証、請求書等の会計関係書類一切の閲覧及び謄写を求めた事案である。
本件マンションの管理組合規約(本件規約)においては、控訴人理事長が会計帳簿等を作成・保管し、組合員又は利害関係人の閲覧請求があったときはこれを閲覧させなければならず、控訴人理事長は、この場合、閲覧につき相当の日時、場所等を指定することができる旨が規定されているものの、謄写請求については何らの規定も設けられていないが、被控訴人らは、閲覧請求の定めには謄写請求も含まれると解するのが当事者の合理的意思に適う等と主張した。
原審は、閲覧請求についてはこれを認容し、謄写請求については、閲覧請求の趣旨に鑑み、閲覧に加えて謄写も求めることができるとし、謄写の場所を本件文書の備え付け場所と限定した上で認容(それ以外の場所については棄却)したため、控訴人が敗訴部分を不服として控訴した。
【裁判所の判断】
原判決を次のとおり変更する。
控訴人は、被控訴人らに対し、平成18年度ないし平成20年度における総勘定元帳、現金出納帳、預金通帳及びそれらを裏付ける領収証、請求書等の会計関係書類一切を閲覧させよ。
【判例のポイント】
1 謄写をするに当たっては,謄写作業を要し、謄写に伴う費用の負担が生じるといった点で閲覧とは異なる問題が生じるのであるから、閲覧が許される場合に当然に謄写も許されるということはできないのであり、謄写請求権が認められるか否かは、当該規約が謄写請求権を認めているか否かによるものと解される。
本件規約で閲覧請求権について明文で定めている一方で、謄写請求権について何らの規定がないことからすると、本件規約においては、謄写請求権を認めないこととしたものと認められる。
2 被控訴人らは、閲覧のみしか認めないとなると必然的に長時間の閲覧が必要となり、場合によっては2回、3回の閲覧が必要となるのに対し、謄写が認められれば、閲覧者が閲覧に要する時間は非常に短くなり、謄写を認めることは閲覧をさせる控訴人の利益にもなるから、謄写請求権が認められるべきであると主張する。
しかし、控訴人は、組合員からの閲覧請求に対して社会通念上相当と認められる時間閲覧をさせることで足り、1回の閲覧請求で不相当に長時間の閲覧が認められるものではないから、閲覧の時間を短縮するために謄写請求権を認めるべきとの主張は理由がない。
本件裁判例は、原審判決(東京地判平成23年3月3日)を覆し、謄写請求を認めませんでした。
規約が謄写請求権を認めるか否かによるという極めて明快な結論ですが、上記判例のポイント2における被控訴人らの主張に対して裁判所が十分な回答ができているかは微妙なところです。
スマホで撮影させたほうが早いと思うのは私だけではないはずです。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。