おはようございます。
今日は、総会の特別決議の無効確認請求訴訟について、訴えの利益がないとされ却下された事案(東京高判令和3年4月27日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの区分所有権を有する控訴人らが、本件マンションの管理組合である被控訴人に対し、平成19年1月28日に開催された被控訴人の第18期定期総会においてされた本件特別決議が無効であることの確認又はこれと選択的に本件特別決議が不存在であることの確認を求める事案である。
原審は、控訴人らの本件特別決議の無効確認又は不存在確認を求める訴えには確認の利益が認められ、本件特別決議において賛成組合員数が組合員総数の4分の3未満であったことからこれが可決されたとは認められず、賛成組合員数が足りないという瑕疵が治癒されたことや本件特別決議が追認されたことは認められないから、本件特別決議は無効であるが、控訴人らの本件各請求は権利濫用であるとしてこれらをいずれも棄却する判決をしたところ、控訴人らがこれを不服として本件各控訴をした。
【裁判所の判断】
原判決を取り消す。
本件各訴えをいずれも却下する。
【判例のポイント】
1 控訴人らによる本件各訴えの趣旨及び目的は、被控訴人において、権限に疑いのない適法適切な管理が行われるよう是正し、不当な制約を受け続けてきた法人区分所有者の権利を回復させることにあると解されるところ、被控訴人は、令和2年11月の臨時総会における第2号議案の決議により、本件特別決議が可決されなかったものと取り扱うこととされたため、被控訴人自身が本件特別決議の有効性を主張することはできないことになったものであり、また、本件特別決議前の本件管理規約に基づき、控訴人らを含め本件マンションに居住しているとはいえない区分所有者においても役員候補者として立候補できることを明らかにした上、理事4名及び監事1名の選任決議を行い、役員が適法に選任されたものである。
これによれば、本件各訴えにより本件特別決議の無効又は不存在の確認を求めることの意義は失われたものであり、本件各訴えについて訴えの利益はないというべきである。
訴訟係属中に上記判例のポイント1記載のとおり、事情の変更があり、もはや本件特別決議の無効または不存在の確認を求める理由・必要がなくなったため、訴えの利益を欠くと判断されました。
なお、原審判決でも述べられているとおり、本件は、特別決議の有効要件を満たしていなかった事案です。このようなことにならないように、慎重に手続きを進めましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。