おはようございます。
今日は、管理組合による管理が不十分であったことを理由に管理費及び修繕積立金を滞納することの是非(東京地判令和3年4月7日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの管理組合である原告が、本件マンションの一部である本件区分所有建物の区分所有者である被告に対し、未払の管理費及び修繕積立金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 被告は、令和元年7月6日より前は管理組合が存在せず、支払先も存在しないとか、過去に管理がなされていなかったから管理費等を支払う必要はないなどと主張する。
しかしながら、同日より前であっても、本件原始管理規約が有効に存在しており、これに基づき、区分所有者に管理費等を負担する義務がある。
2 また、区分所有法3条によれば、区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を当然に構成するものとされるから、同日より前であっても、同条に基づく団体が存在していたというべきである。
そして、この団体が、同日より前においては、法人格や社団性を備えない民法上の組合にすぎなかったとしても、本件マンションが、居住に耐え得る状態を維持してきたこと、過去にも実際に管理費等が支払われていた事実があることなどからすれば、その間、その団体によって保存、管理行為が行われていたものと推認され、構成員である区分所有者が、その費用を負担しない理由はない(なお、実際に、Aが、共用部の清掃や修理修繕を行っていた事実が認められ、委任ないし事務管理に基づく費用が発生している余地がある。)。
3 また、被告は、管理状況等の書類が開示されない限り支払わないといった趣旨の主張もするが、これは、原告からの支払請求に対し何らの抗弁にもならない。
被告は、本件訴訟において「被告が本件区分所有建物を取得した時点では、エレベーターが動いておらず、ゴミなども落ちて汚れており、管理がされていなかったものといえる。」と主張しましたが、上記判例のポイント2のとおり、この主張は採用されませんでした。
仮にエレベーターが動いておらず、ゴミ等が落ちて汚れていたとしても、そのことをもって管理費・修繕積立金を支払われない理由とはなりません。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。