おはようございます。
今日は、マンションの特定の専有部分からの汚水が流れる排水管の枝管が共用部分に当たるとされた事案(最判平成12年3月21日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告及び被告らが居住する東豊エステートについて、原告が区分所有する707号室と被告鳥羽が区分所有し、同中村とともに居住する607号室は上下階の関係にあるところ、607号室の天井から水漏れ事故が発生し、607号室の天井裏を通っている排水管が原因しているとして、原告が被告らに対し、右排水管が本件建物の区分所有者全員の共用部分であることの確認を求めるとともに、被告鳥羽及び同中村に対し、水漏れによる損害賠償義務のないことの確認を求め、被告管理組合に対しては、原告が水漏れ費用の立替払いをしたとしてその求償を求めた事案である。
【裁判所の判断】
原告と被告らとの間で、東豊エステート607号室天井内に設置されている別紙図面赤線部分の排水管は、東豊エステート区分所有者全員の共用部分であることを確認する。
原告は被告中村及び同鳥羽に対して、平成6年12月23日ころ発生した別紙図面の赤線部分の排水管に起因する水漏れによる損害賠償金21万6516円の支払い債務のないことを確認する。
被告管理組合は原告に対し、金12万7200円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件建物の707号室の台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水については、同室の床下にあるいわゆる躯体部分であるコンクリートスラブを貫通してその階下にある607号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造となっているところ、本件排水管は、右枝管のうち、右コンクリートスラブと607号室の天井板との間の空間に配された部分である。
本件排水管には、本管に合流する直前で708号室の便所から出る汚水を流す枝管が接続されており、707号室及び708号室以外の部屋からの汚水は流れ込んでいない。
本件排水管は、右コンクリートスラブの下にあるため、707号室及び708号室から本件排水管の点検、修理を行うことは不可能であり、607号室からその天井板の裏に入ってこれを実施するほか方法はない。
本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、区分所有法2条4項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。
2 (原審:東京高判平成9年5月15日)本件排水管は、特定の区分所有者の専用に供されているのであるが、その所在する場所からみて当該区分所有者の支配管理下にはなく、また、建物全体の排水との関連からみると、排水本管との一体的な管理が必要であるから、これを当該専有部分の区分所有者の専有に属する物として、これをその者の責任で維持管理をさせるのは相当ではない。また、これが存在する空間の属する専有部分の所有者は、これを利用するものではないから、当該所有者の専有に属させる根拠もない。
結局、排水管の枝管であって現に特定の区分所有者の専用に供されているものでも、それがその者の専有部分内にないものは、共用部分として、建物全体の排水施設の維持管理、機能の保全という観点から、法の定める規制に従わせることが相当であると判断される。
よって、本件排水管は、専有部分に属しない建物の付属物として、共用部分であるというべきである。
今や実務上確定している考え方ですので、しっかりと押さえておきましょう。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。