おはようございます。
今日は、一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料につき生ずる不当利得返還請求権を他の区分所有者が行使することができないとされた事案(最判平成27年9月18日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの区分所有者の1人である上告人が、同じく本件マンションの区分所有者である被上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、被上告人が本件マンションの共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち共用部分に係る上告人の持分割合相当額の金員及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権は各区分所有者に帰属するから、各区分所有者は、原則として、上記請求権を行使することができるものと解するのが相当である。
2 建物の区分所有等に関する法律は、区分所有者が、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体(区分所有者の団体)を構成する旨を規定し(3条前段)、この団体の意思決定機関としての集会の招集手続並びに決議の方法及び効力等や、この団体の自治的規範としての規約の設定の手続及び効力等を規定している(第1章第5節)。
また、同法18条1項本文及び2項は、区分所有者に建物の区分所有という共同の目的があり、この共同目的達成の手段として共用部分が区分所有者全員の共有に属するものとされているという特殊性に鑑みて、共用部分の管理に関する事項は集会の決議で決するか、又は規約で定めをする旨を規定し、共用部分の管理を団体的規制に服させている。
そして、共用部分を第三者に賃貸することは共用部分の管理に関する事項に当たるところ、上記請求権は、共用部分の第三者に対する賃貸による収益を得ることができなかったという区分所有者の損失を回復するためのものであるから、共用部分の管理と密接に関連するものであるといえる。
そうすると、区分所有者の団体は、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨を集会で決議し、又は規約で定めることができるものと解される。
そして、上記の集会の決議又は規約の定めがある場合には、各区分所有者は、上記請求権を行使することができないものと解するのが相当である。
そして、共用部分の管理を団体的規制に服させている上記のような建物の区分所有等に関する法律の趣旨に照らすと、区分所有者の団体の執行機関である管理者が共用部分の管理を行い、共用部分を使用させることができる旨の集会の決議又は規約の定めがある場合には、上記の集会の決議又は規約の定めは、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨を含むものと解される。
3 これを本件についてみると、本件マンションの管理規約には、管理者が共用部分の管理を行い、共用部分を特定の区分所有者に無償で使用させることができる旨の定めがあり、この定めは、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使することができる旨を含むものと解すべきであるから、上告人は、不当利得返還請求権を行使することができない。
最高裁は、区分所有者個人が個別に不当利得返還請求権を行使することは、原則として認められるとしつつ、本件においては、例外にあたるため、認められないと判断しました。
ただ、実際のところ、最高裁が示した原則に該当するマンションがどれほどあるのでしょうか。
多くのマンションが、本件同様、例外にあたり、結果、個人による不当利得返還請求ができないことになると思われます。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。