管理会社等との紛争3 エレベーター保守会社とマンション管理組合との間におけるエレベーター保守管理契約が管理組合により契約期間途中で解除された場合においても管理組合が損害賠償責任を負うものではないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、エレベーター保守会社とマンション管理組合との間におけるエレベーター保守管理契約が管理組合により契約期間途中で解除された場合においても管理組合が損害賠償責任を負うものではないとされた事案(東京地判平成15年5月21日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告から期間の定めのあるエレベーター保守管理契約によってエレベーター保守点検業務の委託を受けていた原告が、業務委託者である被告に対し、期間満了前になされた保守管理契約解除に伴う債務不履行による損害賠償請求権に基づいて、逸失利益相当額の金288万8550円及びこれに対する解除の日の翌日から支払済みまで商事法定利率である年六分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件契約の内容は、その性質は、期間の定めのある有償の準委任契約と解され、したがって、本件契約には、民法656条により、民法の委任契約に関する規定が準用される。そして、民法656条が準用する651条2項本文は、「当事者の一方が相手方のために不利なる時期に於て委任を解除したるときは其の損害を賠償することを要す」と規定しているところ、本条項の「不利なる時期」とは、その委任の内容である事務処理自体に関して受任者が不利益を被るべき時期をいい、したがって、事務処理とは別の報酬の喪失の場合は含まれないものと解される(最判昭和四三年九月三日第三小法廷判決参照)。
そして、本件において、原告が主張する本件解約に伴って発生した不利益は、事務処理とは別の報酬の喪失に他ならず、報酬は原告が月々のエレベーター保守管理サービスを行うことによって発生するものであること、本件解約によって原告において従業員の配置を見直したり従業員を解雇したなどといった事情を認めるに足りる証拠はなく、被告が90日間の猶予をもって本件解約通知を行っていることからすると、本件解約は「不利な時期」においてなされた場合に当たらないものと認めるのが相当である。

2 原告は、期間の定めのある有償である本件契約においては、委任者である被告は、本件解約に伴い逸失利益相当額の損害賠償債務を負う旨主張するが、仮にそのように解すると、被告は、解約後においても、契約に伴う利益を享受することがないにもかかわらず、その対価のみは負担しなければならないことになって、解約をすることが全く無意味となり、当事者間の信頼関係を基礎とする委任契約について、民法651条が解約を認めた趣旨を没却することとなって、相当ではない。

本件は、管理委託契約ではなく、エレベータ保守管理契約ですが、契約期間の途中での解約に関する考え方がよくわかります。

民法651条2項の「不利な時期」の意義はよく理解しておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。