おはようございます。
今日は、管理規約・使用細則に基づくペット飼育の全面禁止の有効性(東京地判平成23年12月16日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンション管理組合である原告が、同マンションの区分所有者である被告に対し、管理規約(ないしこれに基づく使用細則)に基づき、上記マンション内における犬の飼育の差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、弁護士費用相当損害金30万円+遅延損害金の支払を求めている事案である。
【裁判所の判断】
被告は、物件内で犬を飼育してはならない。
被告は、原告に対し、20万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件マンションの使用細則第1条1号では「他の区分所有者に、迷惑または危害を及ぼすような動物(犬、猫、猿等)を飼育すること」を禁止しているところ、これを素直に読めば一般的・抽象的に他の区分所有者に迷惑又は危害を及ぼす動物として犬、猫、猿を列挙しているものであり、特に猛犬などに限定している趣旨とは解されないし、実際、ある特定の犬、猫等が他の区分所有者に迷惑又は危害を及ぼすかどうかを個別具体的に判断することは困難であり、それによってマンションの住民間で紛争を生ずるおそれもあることから、上記使用細則を被告主張のように解することは相当でない。
したがって、被告が本件犬を物件内で飼育することは許されないものというべきである。
ちなみに、犬については、噛みつくなどの人などへの直接的な危害行為はもとより、その鳴き声、臭気、体毛の飛散等によりマンション内での飼育により他の住人が不快感を抱くこと(動物アレルギーの者もいることがある。)はしばしば起こり得ることであり、上記細則のような定めを設けることは十分な合理性がある。
2 被告は犬の飼育が本件マンションの使用細則に違反するものであることを知りながら犬の飼育を継続し、原告からのペット異臭改善勧告に対して誓約書を提出して迷惑行為事項の改善及び居住者からの苦情が再発した場合、直ちに本件マンション内におけるペット飼育を中止することを誓約したにもかかわらず、依然として原告に対する異臭の苦情が寄せられたが、被告は本件犬の飼育を継続したため、原告は弁護士に依頼して本件訴えを提起せざるを得なくなったものと認められ、被告の本件犬の飼育は原告に対する不法行為を構成する。
そして、本件事案の難易及び認容状況、訴え提起に至る経緯、被告の応訴の状況その他本件に顕れた一切の事情にかんがみると、上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は20万円と認めるのが相当である。
本件裁判例も他の同種事案における裁判例同様、管理規約や使用細則の限定解釈はしていません。
上記判例のポイント1記載のとおり、他の区分所有者への危害・迷惑の有無を個別具体的に判断することは困難であることが実質的な理由です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。