おはようございます。
今日は、駐車場専用使用権(1か月260円)を1か月2万円に増額する総会決議の有効性(東京地判平成20年4月11日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、マンションの管理組合である原告が当該マンションの一室を所有する被告に対して管理費等及び専有部分使用料等の支払いを求め、被告が管理組合の規約を改定した総会の瑕疵を主張して改定部分の無効確認を求めた事案である。
【裁判所の判断】
原告は被告に対し、原告の第21期臨時総会において改定した管理規約のうち、「一部事務所部分前面の敷地」の専用使用料1か月2万円とする旨の条項のうち、専用使用料1か月6000円を超える部分は無効であることを確認する
【判例のポイント】
1 被告は、新管理規約による一部事務所部分前面の敷地の専用使用料の増額を承諾せず、一部事務所部分前面の敷地の専用使用料の改定は、一部事務所部分前面の敷地の専用使用権者が○○○号室の区分所有権者のみである以上、一部の区分所有者である被告の権利に特別の影響を及ぼすものといわざるを得ない。
2 原告は、主な収入が管理費であるのに、平成14年以降、管理費及び修繕積立金を段階的に減額している一方で、自転車置場や一部事務所部分前面の敷地の専用使用料の値上げをしているのであって、専用使用権を有する者の犠牲のもとに他の区分所有者の利益を企図したとみる余地も十分にある。
しかしながら、他方で、近隣駐車場の賃料相場からみて、一部事務所部分前面の敷地の専用使用料が低額にすぎることは否定できない。しかも、被告及びその前区分所有者は、本件マンションの分譲以来、長期(約20年間)に亘り、低額(少なくとも月額260円以下)の専用使用料を享受してきて、○○○号室の区分所有権取得時にその対価を支払っているとしても、その間、一部事務所部分前面の敷地の固定資産税、都市計画税の支払いや、一部事務所部分前面の敷地及び簡易屋根の維持管理費用の支払いを免れているのであり、原告が一部事務所部分前面の敷地の鉄部塗装費用を負担していることを考慮すると、○○○号室の区分所有者は、単に、敷地の一部を専用使用するという以上に他の区分所有者の経済的負担のもとに一部事務所部分前面の敷地を専用使用していたのであって、他の区分所有者との間の衡平を欠く状態に至っているというべきであるから、これらの事情を総合すると一部事務所部分前面の敷地の専用使用料について、増額の必要性及び合理性が認められる。
3 相当使用料についてみるに、一部事務所部分前面の敷地の固定資産税、都市計画税は、面積割した場合は、月額1816円(平成18年度)であって、この額以上の使用料を徴収することは当然であること、駐輪場(13台)は1台当たり月額300円であり、駐輪場の面積と一部事務所部分前面の敷地の面積がほぼ同等と認められること、駐輪場は従前は無償であったこと、近隣駐車場の相場等を総合すると、固定資産税、都市計画税の3倍程度の月額6000円をもって社会通念上相当な額と認める。
裁判所は、諸般の事情に鑑み、月額260円の駐車場料金を6000円に増額する限度で有効と判断しました。
裁判所がどのような要素を考慮して妥当な金額を決定しているのかがよくわかりますね。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。