おはようございます。
今日は、住居店舗複合集合住宅の居住用専有部分における会社事務所としての使用を目的とする賃貸借契約が区分所有者の共同生活上の障害が著しいことを理由に解除された事案(東京地八王子支判平成5年7月9日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、住居店舗複合集合住宅の居住用専有部分における会社事務所としての使用を目的とする賃貸借契約が共同利益背反行為に該当するかが争われた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 本件建物のように住居専用部分と店舗専用部分からなる複合住宅において、本件管理規約及び使用細則の定める右専用部分の区画に従って利用することは、居住者の良好な環境を維持する上で基本的で重要な事柄であり、区分所有者である居住者の共同生活上の利益を維持・管理するために不可欠な要件であると認められる。
2 2階の住居専用部分(205号)が被告会社の事務所として使用されること自体により、周囲の居住環境に変化をもたらすことは否定できない。更に、被告会社の管理規約違反を放置すると、住居専用部分と店舗専用部分との区画が曖昧になり、やがては居住環境に著しい変化をもたらす可能性が高いばかりでなく、管理規約の通用性・実効性、管理規約に対する信頼を損なう、ひろく、他の規約違反を誘発する可能性さえある。
3 管理組合が繰り返して被告会社に対し、用途違反を是正し、本件専有部分から退去するよう勧告したが、これに対する被告会社の対決・強硬の態度が変わらない。
4 以上の事実を考えると、被告会社の事務所使用は、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為で、それによる区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってその障害を除去して区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときに当たるものというべきである。
区分所有法59条、60条の実体的要件は、共同利益背反行為による「区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当することです。
規範的要件のため、いかなる事実があれば足りるのかについては、過去の裁判例を参考にしながら検討する必要があります。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。