おはようございます。
今日は、理事会への代理出席の当否(最判平成2年11月26日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、管理組合法人の理事会への理事の代理出席を認める規約の定め及び理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、その理事を代理して理事会に出席させることができる旨を定めた条項の当否が争点となった事案である。
【裁判所の判断】
1 管理組合法人の理事会への理事の代理出席を認める規約の定めは違法でない。
2 管理組合法人の規約中、理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、その理事を代理して理事会に出席させることができる旨を定めた条項は違法でない。
【判例のポイント】
1 法人の意思決定のための内部的会議体における出席及び議決権の行使が代理に親しむかどうかについては、当該法人において当該会議体が設置された趣旨、当該会議体に委任された事務の内容に照らして、その代理が法人の理事に対する委任の本旨に背馳するものでないかどうかによって決すべきものである。
2 これを、管理組合についてみるに、法によれば、管理組合の事務は集会の決議によることが原則とされ、区分所有権の内容に影響を及ぼす事項は規約又は集会決議によって定めるべき事項とされ、規約で理事又はその他の役員に委任し得る事項は限定されており(法五二条一項)、複数の理事が存する場合には過半数によって決する旨の民法五二条二項の規定が準用されている。しかし、複数の理事を置くか否か、代表権のない理事を置くか否か(法四九条四項)、複数の理事を置いた場合の意思決定を理事会によって行うか否か、更には、理事会を設けた場合の出席の要否及び議決権の行使の方法について、法は、これを自治的規範である規約に委ねているものと解するのが相当である。すなわち、規約において、代表権を有する理事を定め、その事務の執行を補佐、監督するために代表権のない理事を定め、これらの者による理事会を設けることも、理事会における出席及び議決権の行使について代理の可否、その要件及び被選任者の範囲を定めることも、可能というべきである。
3 そして、本件条項は、理事会への出席のみならず、理事会での議決権の行使の代理を許すことを定めたものと解されるが、理事に事故がある場合に限定して、被選任者の範囲を理事の配偶者又は一親等の親族に限って、当該理事の選任に基づいて、理事会への代理出席を認めるものであるから、この条項が管理組合の理事への信任関係を害するものということはできない。
実務では基本的な事項ですのでしっかり押さえておきましょう。
なお、平成18年の区分所有法改正前の49条4項は、同年の改正により、同条5項になっています。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。