おはようございます。
今日は、正当な理由なく役員を解任したことを理由とする損害賠償請求の可否(東京地判令和元年7月22日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、共同住宅の管理組合の組合員である控訴人が、同管理組合及び同管理組合の理事長等である被控訴人らに対し、控訴人を副理事長から解任する決議をした被控訴人組合の臨時総会について、〈ア〉役員の解任を総会の会議の目的である事項とするときは、あらかじめ理事会で議案を決定すべきであるにもかかわらず、これをしなかったこと、〈イ〉正当な理由なく控訴人を解任したこと等の理由から、損害賠償金合計830万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、控訴人の原審における請求をいずれも棄却した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 本件規約において、役員の解任方法について定めた規定はない。そこで、被控訴人組合の役員の解任については、管理組合法人の理事を集会の決議によって解任することができるとする区分所有法49条8項、25条1項の準用により、被控訴人の総会の決議によるものと解される。
そして、同法には、役員解任を総会の議案とすることにつき、理事会で決定しなければならない旨の規定は存在しないから、本件臨時総会における本件解任について、あらかじめ控訴人解任の議案を理事会で決定しなかったことは、本件規約及び区分所有法に反せず、不法行為に当たらない。
2 本件規約において、役員の解任につき正当な理由を要する旨を定めた規定はない。
また、区分所有法49条8項、25条1項は、管理組合法人の理事を解任できる場合を限定していないことから、管理組合法人の理事の解任に当たっては、同法25条2項が規定するような不正な行為その他職務を行うに適しない事情といった特別の解任理由は不要であると解される。
理事の解任決議(25条1項)には、特別の解任理由は必要とされていません。
なお、理事解任請求の訴え(同条2項)は、要件が異なるので注意が必要です。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。