義務違反者に対する措置5 7条先取特権の行使が可能にもかかわらず59条競売が認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、7条先取特権の行使が可能にもかかわらず59条競売が認容された事案(東京地判平成26年3月27日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有法25条により本件マンションの管理者として選任された原告が、本件建物の区分所有者である被告に対し、主位的に区分所有法59条1項に基づき本件建物及び本件土地の競売を求め、予備的に同法58条1項に基づき本件建物の使用禁止を求め、一方、被告が、原告に対し、本件建物について本件修復工事の施工を求めた(反訴)事案である。

【裁判所の判断】

本訴主位的請求認容(予備的請求棄却)

反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 被告は一方的に管理費等の不払を続けているものであり、上記は共同利益背反行為に該当するものである。管理費等の確保自体は、管理費等債権の先取特権(区分所有法7条)に基づく競売請求等により可能ではあるが、上記のような被告の非協力的態度は、競売請求における他の方法に関する考慮要素となるというべきである。

2 本件工作物の設置は共同利益背反行為というべきであるが、本件組合が本訴提起直前の平成21年8月に初めて撤去を求めたものであることに照らせば、これのみを理由に競売請求が認められるとは言い難い。しかしながら、上記は、他の共同利益背反行為と併せて競売請求における他の方法に関する考慮要素となるというべきである。

3 被告には上記の各共同利益背反行為が認められるところ、特に本件マンションの保存に大きく影響する本件建物内壁の修理をしないことに関しては区分所有者の協力がなければその解消が困難なものである。そして、これらの共同利益背反行為に見られる被告の非協力的態度に鑑みれば、競売の方法によらなければその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であると認められる。したがって原告の競売請求は理由がある。

7条先取特権行使の可能性を認めつつも、被告の非協力的態度を考慮し、59条競売請求を認容した事案です。

非常に参考になる裁判例ですので、しっかりと押さえておきましょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。