義務違反者に対する措置4 59条競売については、民事執行法63条は適用されないとし、不動産競売手続の取消請求が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、59条競売については、民事執行法63条は適用されないとし、不動産競売手続の取消請求が認められなかった事案(東京高決平成16年5月20日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合の理事長(区分所有法上の管理者)である抗告人が、専有部分の建物(区分所有権及び敷地利用権)に対する区分所有法59条1項に基づく競売請求を認容した確定判決を債務名義とし、同判決の被告を相手方として、民事執行法195条に基づき、本件建物に対する競売を申し立て、平成15年4月28日に競売開始決定を得たところ、原審が、本件建物の最低売却価額418万円で手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権合計2788万円(見込額)を弁済して剰余を生ずる見込みがないとして、その旨を抗告人に通知した上で、同年8月20日、民事執行法63条2項により、本件建物に対する競売の手続を取り消す旨のいわゆる無剰余取消決定をしたため、抗告人が、上記競売は区分所有法59条に基づくものであり、これに民事執行法63条の剰余主義の規定は適用されないと主張して、原決定の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

原決定取消
→民事執行法63条の適用否定

【判例のポイント】

1 同法59条の規定の趣旨からすれば、同条に基づく競売は、当該区分所有者の区分所有権を売却することによって当該区分所有者から区分所有権を剥奪することを目的とし、競売の申立人に対する配当を全く予定していないものであるから、同条に基づく競売においては、そもそも、配当を受けるべき差押債権者が存在せず、競売の申立人に配当されるべき余剰を生ずるかどうかを問題とする余地はないものというべきである。

59条競売では、剰余が生ずる見込みがなくても、競売手続は取り消されません。

実務においては基本事項ですのでしっかり押さえておきましょう。

そして、この補充性の要件との関係で、本裁判例でも問題となっている7条先取特権との関係が問題となりますので、事前に不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。